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★発信箱:原発と倫理=青野由利(論説室)
手元にちょっと変わったドイツ語の教科書がある。ぱらぱらめくっても普通だが、前書きを読むと作った意図がはっきりしている。
原発事故以降の世界を生きていくために何が必要か。一つの答えが「ドイツ語を読む力」だったという。
著者の一人である京都大教授の大川勇さんによれば、3・11以降、精度の高い情報を得るにはドイツ語が欠かせなかった。
メルケル首相が間髪を入れず脱原発にかじを切った背景を理解するにもドイツ語が必要。
メルケルさんは、原発の専門家による「原子炉安全委員会」と、哲学者らによる「倫理委員会」に意見を聞いた。
二つの答申は相反していたが、すんなり倫理委の主張を受け入れた。そこに、カント以来の倫理の思想が読み取れる、というのだ。
日本ではどうか。原発政策に倫理は無縁かと思っていたら、意外なところで出合った。原子力委員会が昨年末に公表した見解だ。
今後の原子力研究開発の評価には、市民団体や社会科学の人も参加し、「倫理的、法的、社会的」視点を入れた作業が重要だと述べている。
その通りと思うにつけ、エネルギー基本計画を作る審議会の委員の入れ替えに驚く。民主党政権の時には原発に批判的な委員が3分の1を占めた。
安倍政権は、そこから市民団体のメンバーや、原発の高コストを明らかにした委員、再生可能エネルギー推進派の委員をはずした。
代わりに、明確な原発推進派や、原発立地自治体の知事を加えた。あからさまなやり方に、倫理はどこへ?と言いたくなる。
原発事故の背景には利害関係者の声を無批判に受け入れてきた政策があった。そんな過去への逆戻りだけはごめんこうむりたい。
毎日新聞 2013年03月15日 00時22分
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