13/02/26 12:49:12.09 9j8woNgai
>>64
親父が死んだ。
あっけない死だった。
お袋は二晩ほど泣いたが、その後はケロリとして気丈に法要やら親戚への挨拶回りやらをこなしていた。
2週間程過ぎ、父の居なくなった我が家にも平穏が戻り、ふと暇を持て余し僕は父の書斎に入った。
コンピュータエンジニアだった父は、秘密主義でも無いが、あまり多く語る人間では無かった。
自分の子供である僕の事に興味をもってなかったのは間違いない。中学くらいから、まともに時間を過ごした記憶も無い。
お互い嫌ってた訳でもないと思うが、僕がくだらない事件を起こしてからは更に疎遠になっていた。
「・・・・」
父の書斎に特に懐かしい記憶がある訳でもないので、やはり特に感情の起伏は起きない。たんたんと時間だけが過ぎた。
コンピュータは特にロックも掛けず、そのまま中を覗く事が出来た。引き出しを開けても、コンピュータ関連のノートやらメモばかり。
「エロいファイルの一つや二つ、無いものかねぇ」
そう呟いた。セリフを読むようで、ちょっとわざとらしかったかも知れない。
ふと本棚に目が行った。
「コンピュータの歴史」
古ぼけた、通しで6冊もある今更役に立ちそうにない本なのだけど、何か気に掛かった。違和感を感じた。違和感は3巻と4巻の間にある7巻だった。この本は全部で7巻らしい。
几帳面と言うかオタク気質と言うか、パラノイア的であった父が、何故か7巻だけ揃えていなかった。僕は本を手にした。