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ネット弁慶が街中に現れた理由
小田嶋 隆 【プロフィール】 バックナンバー2013年2月22日(金)1/5ページ
心を痛めている。
……という書き出しを読んだ瞬間に
「なんだこの偽善者は」
と身構えるタイプの読者がいる。
ながらく原稿を書く仕事をしてきて、最近、つくづく感じるのは、若い読者のなかに、
情緒的な言い回しを嫌う人々が増えていることだ。
彼らが嫌う物言いは、「心を痛める」だけではない。
「寄り添う」「向き合う」「気遣う」「ふれあい」「おもいやり」「きずな」といったあたりの、
手ぬるい印象のやまとことばは、おおむね評判が良くない。かえって反発を招く。
彼らの気持ちは、私にも、半分ぐらいまでは理解できる。
この国のマスメディアでは、論争的な問題を語るに当たって、
あえて情緒的な言葉を使うことで対立点を曖昧にするみたいな
レトリックを駆使する人々が高い地位を占めることになっている。
彼らは、論点を心情の次元に分解することで、あらゆる問題を日曜版に移動させようとしている。
若い読者は、そういう姿勢の背後にある卑怯さを見逃さない。
リテラシーとも読解力とも違う、不思議な能力だ。
(つづく)
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