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近ごろは、どこの会社でも役所でも愛煙家は肩身が狭い。くわえたばこでパソコンに
向かうなどもってのほか。ちょっと一服のためには、階段を上り下りして狭い喫煙室に
駆け込むしかない。
▼家に帰っても副流煙の害を知り尽くしている家人に白い目で見られ、ベランダでし
か紫煙をくゆらせられないホタル族がなんと多いことか。そんな流浪の民が、脚光を浴
びるひとときがある。
▼たいがいの喫煙室は、部局を超えて人が集まってくる割に狭く、黙って吸っていて
もうわさ話はいやでも耳に入る。ことに人事の発令前にはまことしやかな情報が飛び交
い、愛煙家もそのときだけは人事通としてちやほやされる。
▼もちろん「喫煙室情報」は、当たりもあればはずれもある。格段にはずれが多いの
だが、たまに当たる。だからといって情報が事前に漏れたから、という理由で人事が差
し替わるケースはまれである。そんなことをすれば、トップの見識が問われるからだ。
▼永田町には常人には理解し難い掟(おきて)がいくつもあるが、事前に報道された
人事案は受けつけない、という国会の「事前報道ルール」ほどばかげたものはない。民
主党は掟を盾に、公取委員長の名前が事前に読売新聞に出たとして議院運営委員会を退
席したが、反省がまったく足りない。
▼かつて民主党は、財務省出身だから、なんだかんだと愚にもつかぬ理由で、日銀総
裁候補をつぶしたが、結果はどうだったか。妥協の産物で選ばれた人物が、ちょっと早
く辞めるだけで円安株高になった事実が雄弁に物語っている。人事騒動の余波もあって
きのう、株価は大幅に下がった。せっかく立ち去りかけた貧乏神をこの党は再び呼び寄
せたいのだろうか。
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