13/01/31 23:17:15.13 x3ysnR+F0
>>267
実は円高は、輸出企業以上に日本の内需企業を大きく痛めつけるというメカニズムを持っています。
それは経済学の仮説である「バラッサ・サミュエルソン効果」によって説明できる。
この効果は、世界の労働市場において、労働力において一物一価の法則が貫徹しているという前提の下での議論。
貿易財部門(製造業など)の生産性が上昇⇒貿易財部門の賃金上昇⇒貿易財部門も非貿易財部門も賃金の平準化が成立⇒非貿易財部門(サービス産業)の賃金上昇
生産性が上昇するセクターは、販売価格を引き上げなくても賃金を上げることができます。
しかし、生産性が上がらない内需産業などは、輸出産業と同じように賃金を引き上げるためには、販売価格を上げなければなりません。
つまり、サービス産業などの内需産業は、インフレをもたらすことで賃金を引き上げ、その賃金上昇は国内産業の成長をもたらすのです。つまり生産性上昇格差に相当する分だけインフレが生じるのです。
このときの「インフレ」は非貿易財の相対価格の上昇である。この相対価格の上昇は、国内消費をもりあげて、市場を活性化させ、全体的な物価上昇をもたらす。
ところが1990年以降、この流れが逆転します。為替のトレンドが円高へと転換したことによって、輸出産業で賃金の引き下げが起こったのです。
輸出産業で賃金の引き下げが起こると、当然、内需産業でも賃金の引き下げが起こります。
つまり超円高が賃金水準のトレンドを決めてきた輸出産業において賃金引下げを引き起こし、それが内需産業に波及したのです。
賃金が低下した内需産業では今度は売値の引き下げ競争(デフレ競争)が起こります。
輸出産業は、生産性上昇の余地があるので、賃金引下げを抑制できますが、内需型の企業は、生産性上昇の余地がないため、ひとたび売値引き上げ競争が起きると、ただちに賃金を引き下げざるをません。
円高の進行はこうして労働賃金の引き下げの悪循環を引き起こし、特に生産性向上の余地のない内需産業、サービス産業を直撃したのです。その結果、日本の経済は大きく疲弊したのです。
このため、従来の雇用システムを前提にすると、生産性向上の余地がないために、内需産業は非正規雇用を増やすことで乗り切ろうとした。それが90年代からの非正規雇用の急増と、また「経済格差」の拡大である。