13/01/23 00:28:57.57 I/ofB+++0
卒業後にぼくが勤めたのは、暗号の作成・解読を行う暗黒の組織、国家安全保障局だった。部
外者からすると、一見、非常に面白そうで魅力的な職場に見えるかもしれない。だが現実は、典型
的な官僚主義の巣窟だった。過剰な予算を政府からぶんどっているくせに、監視の目が行き届い
ていないため、廊下には仕事も机もない連中がうろうろしていた。しかもぼくの所属は退屈な議会
担当局だ。仕事に幻滅を抱かないわけがない。
というわけで、ぼくは契約期間が満了するとすぐ職を辞した。ぼく以外のアメリカ国民ならば誰も
が知っていたことだが、我が政府は無能で、自己の利益にのみ奉仕し、信頼を簡単に裏切るとこ
ろである、実際に勤めて数年、ぼくはようやくそれを思い知った。そして、自分が途方もない馬鹿だ
ということも思い知った。どこか誰かの甘い夢を、公僕に関する多くの嘘っぱちを、おろかなぼくは
信じつづけてしまった。お人好しにもほどがある。その代償はけっして安くなかった。ぼくが愚昧なる
官僚組織で働いている間に、大学時代の友人たちはがんがん金を稼いでいた。途方もない大金を
手にいれた奴もいた。ぼくは思った。
やっぱりウォール街に行った連中が正しかったんじゃないか?
ぼくの口上が終わると、シルバーは言った。「オッケエエエエイ」。とりあえずご満足頂いたようだ。
「国家安全保障局の方はどうだったんだい?」
さてと。やっかいな質問が来た。政府の官僚機関の中で働くことがどんなものかなんて、どう説明
したらいいんだ?ほんとのことを話してしまったら、まず雇ってはもらえないだろう。でも、ぼくだって
ポーカーフェイスぐらいはできる。
「面白い経験でした」、ぼくはすました顔をして言った。
「さようなら、メリルリンチ」
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