13/01/09 12:15:37.15 K46BqZ730
>>38
明治時代の街頭演歌が今でも通じるな
あゝ金の世
あゝ金の世や金の世や。地獄の沙汰も金次第。笑ふも金よ、泣くも金。一も二も金、三も金。
親子の中を割くも金。夫婦の縁を切るも金。強欲非道と譏(そし)らうが、我利我利亡者と譏らうが、
痛くも痒くもあるものか、金になりさへすればよい。人の難儀や迷惑に、遠慮してゐちや身が立たぬ。
あゝ金の世や金の世や。希望(ねがひ)は聖(きよ)き労働の我に手足はあり乍、見えぬ鎖に繋がれて、
朝から晩まで絶間なく、こき使はれて疲れ果て人生(ひと)の味よむ暇もない。これが自由の動物か。
あゝ金の世や金の世や。牛馬に生れて来たならば、あたら頭を下げずとも、要らぬお世辞を言はずとも
済むであらうに、人間と 生れた因果の人力車夫(くるまひき)。やぶれ堤灯股にして、震へ戦くいぢらしさ。
あゝ金の世や金の世や。物価は高くも月給は安い。弁当腰に下げ、ボロの洋服破れ靴。
気の無い顔でポクポクと、お役所通ひも苦しからう。苦しからうが辛からうが、勤めにや妻子の顎が干る。
あゝ金の世や金の世や。牢獄の中の咎人は、食ふにも着るにも眠るにも、世話も苦労も無い身体。
牛や豚さへ小屋がある。月に百両の手当をば、受ける犬さへあるものを。「サガッチャコワイ」よ神の子が、
掃溜などを掻き回し、橋の袂(たもと)や軒の下、石を枕に菰(こも)の夜具、餓ゑて凍えて行路病者(ゆきだおれ)。
あゝ金の世や金の世や。此の寒空に此の薄着。堪へ切れない空腹も、なまじ命のあるからと、
思ひ切つては見たものゝ、年取る親や病める妻、餓ゑて泣く児に縋られて、死ぬにも死なれぬ切なさよ。
あゝ金の世や金の世や。互ひに血眼皿眼(ちまなこさらまなこ)。
食ひ合ひ奪(と)り合ひ毟り合ひ、敗けりや乞食か泥棒か、野垂れ死ぬか、土左衛門、鉄道往生、首括り。
死ぬより外に道は無い。あゝ金の世や金の世や。