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★中国の暴走は止まらない 山田吉彦・東海大教授
北京の空港に降り立つとすぐに息苦しくなった。どんよりと低く立ち込めた雲と地表
の間に、石炭を燃やしたときにでるスモッグが蔓延(まんえん)していた。中国の人々
は、こんな空気を吸わされても不満を言わないのだろうか。
中国が尖閣諸島周辺へ侵入し、反日デモ、暴動が起きた後は、北京の街を歩く日本人
が減った。日本人相手の飲食店や観光業者は悲鳴を上げている。日本からの投資も減少
し、合弁企業も行き詰まった。対日関係の悪化が中国経済に与える影響を懸念する声も
出始めている。
あるビジネスマンは、「日本との仕事が止まった。中国政府が騒ぐまでは、中国人は
誰も尖閣諸島(釣魚台)のことなど知らなかったのに」とぼやいた。
また、軍関係者のひとりは「南シナ海は力で解決できるが、東シナ海は力では動かない。
けんかをするには互いに大国すぎるのだ」と日本との対立を自重する必要を口にした。
中国当局は、東シナ海戦略において、得意の戦略「三戦」を用いた。三戦とは、世論
戦、心理戦、法律戦のことだ。まず法律戦は、領海法、海島保護法により尖閣諸島を国
家管理地にする国内法を整備、国際的には、国連大陸棚限界委員会に日中中間線を越え
沖縄トラフまでを中国の大陸棚として認めるように求めた。
心理戦では、反日運動が功を奏し、日本の経済人は中国経済から日本が排除されるこ
とにおびえている。
そして、世論戦だ。中国中央電視台を通じて、中国の主張を世界中に伝えるとともに
中国漁船団の映像で東シナ海が中国の海であることを示した。国内では、日本の尖閣諸
島国有化に対する抗議運動を大々的に展開した。しかし、今回は世論戦に失敗したよう
だ。世界中に中国の暴力行為が伝えられ、中国への信頼が失墜した。さらに、国内では
反政府運動に足をすくわれ、東シナ海侵攻は後戻りができない。国際社会からの孤立は
避けたいが、国内の分裂は回避しなければならない。矛盾を抱えたままの中国の暴走は
止まらない。隣国を選べないわが国は、国境海域の管理に手を緩めることが許されないのだ。
(東海大教授)
URLリンク(www.zakzak.co.jp)