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社説 金融緩和―安倍発言の危うさ
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総選挙に向け、自民党の安倍総裁が「大胆な金融緩和」発言をエスカレートさせている。先週末には「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」と踏み込んだ。
財政の健全性を守るという基本原則への配慮が希薄で、強い不安を抱く。
安倍氏の主張は、日銀が国債などの金融商品を無制限に買って、本気でインフレを目指していると市場が受けとめれば、「今のうちにモノを買ったり、
つくったりしたほうが得だ」という心理が広がり、経済が活性化するというものだ。
インフレ期待が高まれば、為替も円安に動き、輸出企業の業績が回復して株価が上がり、景気が良くなるという。
さらに、政策が軌道に乗るまでは、建設国債を日銀に買わせて公共事業を拡大し、「国土を強靱(きょうじん)化する」と訴える。
しかし、いいことずくめの話には必ずリスクがある。
インフレへの予想が本当に強まれば、今の超低金利の国債は価値が下がる。そこで、国債を大量に保有する銀行が一斉に売り抜けようとすると、
金利が急騰する。国債発行による政府の資金調達に支障が出る。
国内のすべての債券の金利が2%上がれば、銀行全体で12.8兆円の損失が出ると推計されており、欧州のような財政と金融が絡み合った複合的な危機に
なる恐れがある。銀行の貸出金利も上がる。
こうした危うさのなかで、さらに公共投資で財政を拡大し、その財源となる国債を日銀に引き受けさせていこうという感覚は、理解できない。