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・東京電力の柏崎刈羽原発を訪れた。東電は柏崎刈羽原発の再稼働を経営再建の柱に位置づけており、防潮堤などの
安全対策は着々と進んでいる。だが、原子力規制委員会が来夏にもまとめる新しい安全基準次第では追加の対策を迫られ
再稼働はまったく見通せていない。現場では、いつ動かせるかも分からない原発の安全対策を進める作業員が徒労感に包まれていた。
作業員は晩秋の冷たい風雨に震えながら黙々と鉄筋コンクリートの防潮堤を造っていた。既に5~7号機がある北側の全長
1千メートルはほぼ完成し、1~4号機がある南側の1500メートルも6割まで工事が進んでいる。
新潟県が震災後に作り直した被害想定では、柏崎刈羽原発を襲う津波は最大でも5メートル程度。だが、防潮堤の
高さは福島第1原発を襲った津波と同じ海抜15メートルにした。横村忠幸所長は「発電所は逃げられない。『これでもか』
という高さにした方がいい」と理由を説明してくれた。
ほかにも原子炉建屋を守る防潮壁や、高台に設置した約2万トンの淡水をためられる貯水池など、計画している安全
対策は来年度上期までで総額700億円に上る。
福島第1原発事故の賠償などで資金難にあえぐなか、東電が多額の費用をかけ安全対策を急ぐのは、柏崎刈羽の
再稼働が経営再建を左右するからだ。
東電は再建計画で、来年4月以降、1号機を皮切りに順次再稼働する方針を掲げた。しかし、政府の「原発ゼロ」
政策や規制委発足の遅れなどの誤算が続いたうえ、政局の混乱でエネルギー政策はさらに不透明感を増している。
再稼働に向けたスケジュールは誰も描けない状況だ。
柏崎刈羽原発では東電社員以外にも地元を中心に協力企業の社員約3500人が働いており、東電は「安全確保と
地元雇用の両立」(横村所長)を掲げて工事を続けている。ただ、平成25年度も全基停止が続けば、東電の
赤字幅は計画より約3千億円も拡大するとみられ、資金が底をつきかねない。
「発電所は電気をつくってなんぼ。やっぱり発電がしたいんです」。再稼働のあてもないまま、安全対策だけが進行する
現状に、柏崎刈羽原発の幹部はこう言って肩を落とした。(一部略)
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