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不安が現実になった。田中真紀子文部科学相が大学設置・学校法人審議会の答申を覆し、来春開校予定の3大学の設置申請を不認可
とした。ルールを無視した判断で、到底認められない。
田中文科相は不認可とした個々の具体的理由に言及せず、「大学が全国で約800校ある中、大学教育の質が低下している」「大半
の(審議会)委員が大学(関係者)で、大学同士が互いに検討している」と述べた。
大学の乱立を防ぐためには、大学以外の識者の委員を増やし、より厳正に審査すべきだと言いたかったようだ。
それなら、手順を踏み委員の構成を代えたうえで、新しいメンバーによる審議会で議論すべきである。歴代文科相が任命した現委員
による従来の大学設置基準に沿った答申を否定することは、裁量権の逸脱である。
今回、田中文科相から新設を認められなかった3大学は、いずれも短大や専門学校からの改組で、申請に不備はなかった。しかも、
副大臣ら政務三役にも事前の相談がなかった。政治主導を通り越して、大臣の独断専行に近い。
長年、開学準備に取り組んできた学校側や、志望を予定していた学生らのショックは小さくない。田中文科相は、不認可の決定を取り
消すべきだ。
大学設置基準が事前規制型から事後チェック型に移り、大学は増加の一途をたどっている。それが質の低下を招いている面も否定でき
ない。大学教育の質を高めるための制度改革は必要である。
田中氏は11年前、小泉純一郎内閣の外相に就任したが、事務当局との無用な軋轢(あつれき)で混乱を招き、米国要人との会談を直
前にキャンセルするなど非常識な言動が目立った。大臣としての適性に欠ける政治家を文科相に起用した野田佳彦首相の任命責任は極
めて重い。田中氏に限らず、民主党政権になって以降、教育行政で問題のある政治判断が相次いでいる。
学力向上のため、全児童生徒を対象にした学力テストは抽出方式に切り替えられた。道徳の教材「心のノート」の国による全員配布も
中止になった。
(つづく)
▽産経新聞(2012.11.4 03:39 )
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