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「朝鮮紀行?英国婦人の見た李朝末期」 イザベラ・バード著 (時岡敬子訳/講談社学術文庫)
●城内ソウルを描写するのは勘弁していただきたいところである。北京を見るまでわたしは
ソウルこそこの世でいちばん不潔な町だと思っていたし、紹興〈シャオシン〉へ行くまでは
ソウルの悪臭こそこの世でいちばんひどいにおいだと考えていたのだから!
都会であり首都であるにしては、そのお粗末さはじつに形容しがたい。礼節上二階建ての家は
建てられず、したがって推定二五万人の住民はおもに迷路のような横町の「地べた」で暮らしている。
路地の多くは荷物を積んだ牛どうしがすれちがえず、荷牛と人間ならかろうじてすれちがえる程度の
幅しかなく、おまけにその幅は家々から出た固体および液体の汚物を受ける穴かみぞで狭められている。
悪臭ぷんぷんのその穴やみぞの横に好んで集まるのが、土ぼこりにまみれた半裸の子供たち、
疥癬〈かいせん〉持ちでかすみ目の大きな犬で、犬は汚物の中で転げまわったり、ひなたでまばたきしている。
(p.58-59)