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自民党の新総裁に安倍晋三元首相が選ばれた。１回目の投票でトップに立った石破茂氏を、決選投票で逆転しての勝利である。
小泉純一郎政権の後を受けて首相に就任したものの、２００７年９月に突然辞意を表明し、１年で退陣に追い込まれた
経緯がある。体調悪化が「最大の要因」だったと語っている。理由はどうあれ、途中で政権を投げ出した責任は重い。
いまなぜ安倍氏なのか、国民の疑問と不安を背負った総裁再登板となる。
地方票が石破氏に傾いたのは、一般有権者の厳しい見方を反映したものととらえるべきだろう。地方票とずれた国会議員の
選択は、内向きと言わざるを得ない。
総裁選後、安倍氏は「５年前の私の責任が消えるわけではない」と述べている。ならばまず、過去の辞任に至るいきさつを
あらためて国民に説明し、総括することから始める必要がある。
気になるのは、安倍自民党がどこに向かうかだ。安倍氏は首相時代に「戦後レジーム（体制）からの脱却」を掲げ、
教育基本法を改定し、改憲も視野に入れていた。タカ派色の濃い政治家である。今度の総裁選でも、「戦後体制からの脱却を
目指している。安全保障政策について保守的な立場の私と、リベラルな谷垣禎一総裁とは路線が違う」と断言し、憲法改正や
集団的自衛権の行使を公約に掲げている。
憲法改正は、橋下徹大阪市長が率いる「日本維新の会」の政策でもある。安倍自民党の誕生で改憲勢力が勢いを増し、
具体的に動きだすシナリオも考えられる。注視していく必要がある。
総裁選のテーマが「日本を、取り戻す」である。安倍氏も「強い日本をつくっていく」と語っている。領土問題の最中に
「日本を取り戻す」「強い日本」といった感情に訴える言葉を前面に押し出す感覚に危うさを覚える。
>>2以降に続く
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