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★【アジアＦＴＡ】日本の調整力が問われる
実現すれば域内の総人口が世界の半分の約３４億人、名目国内総生産（ＧＤＰ）は１９兆㌦を超える世界最大規模の経済連携となる。
東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）と日中韓、インドなど計１６カ国が、アジア広域の自由貿易協定（ＦＴＡ）交渉を来年早期に始め、
２０１５年末までの妥結を目指すことで合意した。
先進国が低成長に苦しむ中、アジアは世界経済のけん引役が期待され、
日本としてもその成長力を取り込むためには結び付きの一層の強化が欠かせない。実現に向け、積極的に調整役を果たす必要がある。
アジアの広域の経済連携をめぐっては、中国がＡＳＥＡＮと日中韓の１３カ国の枠組みを主張してきた。
日本は対中けん制の意味もあって、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた１６カ国を提案し、それが受け入れられた形だ。
中国が歩み寄った背景には、米国が主導する環太平洋連携協定（ＴＰＰ）がある。日本のＴＰＰ参加によって、
日米主体の東アジアの自由貿易圏づくりが進む前に、広域のＦＴＡ交渉で優位に立つ狙いからだろう。
もっとも、日本はＴＰＰ参加に向けた国内調整が停滞したままだ。混迷が続く政治状況からも、早期に交渉参加表明に踏み切ることは困難だろう。
現状では、アジアＦＴＡが日本にとって最も重要なＦＴＡともいえる。
今後も着実な成長が見込める域内各国とはいえ、経済発展度は大きく異なり、取り組み姿勢には温度差があるようだ。
関税や投資規制の撤廃など高いレベルの自由化を早期に実現するのは容易ではない。
「日本のためのＦＴＡ」（ＡＳＥＡＮ通商筋）ともいわれるだけに、日本の利害調整力が問われることになる。
困難な交渉を主導するためには、農業をはじめ国内の問題への対応を固めることが欠かせない。
気掛かりなのは、竹島や尖閣諸島の領有権をめぐって対立が続く日中韓の関係だ。
経済力でアジアの上位を占める３カ国がぎくしゃくしたままだと、ＦＴＡ交渉の前進に悪影響を及ぼしかねない。
日本政府は経済と領土問題は切り離して考えるとの立場をとっている。中韓も関係悪化が経済に拡大することは望んでいないだろう。
冷静な対応を両国に求めたい。
高知新聞 2012年09月05日08時21分
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