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★元駐タイ大使・岡崎久彦 情けない「お国のため」なき自民
消費税法案の成立は近来にない快挙である。
ただ、年来一貫して自民党支持の私として、最後の段階で自民党が解散の予定明示を要求したゴタゴタは頂けなかった。
自民党は最後には合意して良識の党たることを示したが、途中では公明党の方がよほど立派な印象を与えた。
解散・総選挙を求める大義名分はどこにあるのだろう。
一体改革という歴史的業績を達成したパートナーの政権の信任を問うのは、どう考えてもヘンである。
「民主党がマニフェスト(政権公約)にないことをしたのだからその責任を問う」に至っては何のことか分からない。
その実現に協力したのは自民党ではないか。
そもそも、従来の自民党の主張を実現してくれた民主党が内閣の不信任に値するだろうか。
その背景としての経緯は理解できる。鳩山由紀夫、菅直人という、おそらくは日本憲政史上最低の内閣が続いて、
国民を不安のどん底に陥れ、民主党の命運は尽きたと思われた。それが大震災直前の状況だった。
ところが、野田佳彦内閣ができて、まずTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)加入交渉に入るという
政治的に難しい決断に踏み切り、次いで自民党が半世紀解決できなかった武器輸出三原則の緩和を実施し、
そして、税と社会保障の一体改革という大事業を自民党と協力して完成させた。
こういう状況と、民主党はすでに国民の支持を失ったのだから、直ちに解散・総選挙をせよという従来の主張が重なって、
このような珍現象が生じたのであろう。
自民党の党利、党略からいえば、それはまだ正しいかもしれない。野田内閣はその業績にもかかわらず支持率は上がっていない。
次の選挙では、自民党が勝つ可能性が大きいからである。
選挙の名分としても、そもそも当初のマニフェストからはじめて民主党がやってきたことは支離滅裂であった。
それを心機一転して国家的政策に取り組むというならば、もう一度選挙をし出直してこいというのは一つの理屈である。
確かにいろいろな理屈はつく。ただ、自民党にとって情けないのは、こうした議論の中で、何がお国のためか、という言葉が全く欠如していることである。(以下略)
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