12/08/20 12:16:31.72 0 BE:1309565849-PLT(12066)
弱腰を見透かされ、公然と侮辱された不快感が募る。竹島に韓国大統領、魚釣島に香港の活動家が上陸した。
この状況で日本の世論に「頭を冷やせ」と呼びかける説得はむなしい。頭を冷やしても片づかない課題が重い。敗戦67年。
先人たちの奮闘努力の結果、世界最高水準の快適社会にたどりついたわれわれが、いつの間にか失ったものに気づかされる夏だ。
先週、街角のミニシアターで岩佐寿弥(ひさや)(77)の新作映画「オロ」を見て「ああ、これだ」と思った。
列島挙げて隣国による領土侵犯に憤激のさなか、頭を冷やしても片づかない日本の課題とは何か。経済大国の忘れ物は何か。
この映画が気負うことなく言い当てている。
オロは映画の主人公、チベット難民の少年の名だ。中国支配下のチベットで生まれ、6歳の時、決死の脱出行でヒマラヤを越えた。
圧政を逃れ、チベット人としての教育を授けたいと親が送り出した。途中の町で同伴の大人に置き去りにされ、皿洗いに雇われてしのぎ、
半年かけてインド北部の町、ダラムサラに着いた。いま10歳。実名、実話、本人出演によるドキュメンタリー作品である。
カメラは、祖国を離れ、異郷の難民村で学業、なりわいに打ち込むチベット人の群像を追う。いつの日か家族との再会を信じ、
チベット語と土着の仏教信仰を守り、他民族による不当な圧迫をはねのけようという明確な意志、貧しくも揺るぎない気高さがまぶしい。
ダラムサラから大阪へ来た在日チベット人の男性(36)が映画のパンフレットの中の座談会でこう言っている。
「チベットは経済的には何も発展していないよ。でも、僕たちの精神力は発展していると思いますよ。
日本人より、アメリカ人より、カナダ人より、オーストラリア人より(笑い)……」
この男性には5歳の男児がいる。日本の保育園に通わせてみたが、結局、ダラムサラの親類に預けた。なぜか。(>>2-3へ続く)
毎日新聞 2012年08月20日 東京朝刊
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