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捕虜収容所で、虐待された少年の自伝
レオ・ゲレインセ自伝 「日本軍強制収容所 心の旅」
難波収、トレナール藤木きよ、ボム三上なをみ訳 手帳舎刊 40~45頁
ことが起こったのは、そこでの初めの頃だったと思うが、正確な日時は覚えていない。
とにかく、点呼のときに誰かが冗談を言った。当時私の脳の働きはいくらか鈍かったので、
その冗談の落ちが私に判ったのは、やや間をおいてからだった。時や遅し。
私がくすくす笑い始めたのは、ちょうど私たちの目の前に一人の日本人{*4}が立ったときだった。
彼は「笑ったのは誰だ」と怒鳴って訊いた。このヤップはまさに悪魔のような奴だった。
日本の現人神天皇のために直立しているときに笑うとは神聖の冒涜である、と彼は烈火の如く怒った。
私は、もうこれでやられてしまうと観念した。恐怖に震えながらも、私は名乗り出なければならぬと思った。
さもなくば、ほかの笑わなかったかも知れない人々が犠牲者となるだろう。
私が名乗って前に引き出されたとき、私は目がくらくらして、周囲のすべてが回り始めるのを感じた。
恐怖のために堪え難くなった私の周りを、さまざまな色がぐるぐると、しかもだんだん急速に回転するのだ。
ヤップが私を殴り始めたのを記憶に残っている最後の情景として、私は大きな暗い穴に落ち込んでしまった。
(中略)
私たちは、肉体的に傷つけられるだけではなく、精神的にも厳しい忍従を強要された。
例えば、体がいくらか回復したとき、私は、何人かの捕らわれ仲間が拷問されるのを視るように強要された。
一度の如きは、誰か{*5}が無茶苦茶に殴られるのを見せられた。
殴打の終わったとき、その人の顔にはもはや生気は見られなかった。
また別の機会には、一人の成年男子が四方から両手両脚を烈しく引っ張られ苦痛に泣き叫ぶ有様を、
私は正視しなければならなかった。その後、この二人が生き延びたかどうか、私は知らない。