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・被害少年の祖父母は市内で銭湯を営んでいる。加害者に恐喝されたカネの大半は、孫かわいさで
祖父母が渡したものだと言われる。祖母は、言葉少なにこう語った。
「(マスコミには)なんにも言うなと言われてる。先生がな・・・、知っててな・・・、
なんであんなかわいそうなことに・・・(肩を落として涙ぐむ)」
少年は自宅マンションの14階から飛び降りて自殺したと見られる。同じマンションに住む女性住民が言う。
「あの朝、高校生の子供を見送って、仕事に出ようと家に鍵をかけたところで、ドスッ!って大きな音が
聞こえた。下に降りたら、広場にあの子が仰向けに倒れてた。目は開いたままでね・・・。隣にはあの子の
双子のお姉ちゃんが、涙をポロポロこぼしながらしゃがんでた。あんな明るい、面白い子が、なんであんな
ことになったんか・・・」
これらはいずれも、本誌記者が現場を歩き、直接聞いた肉声である。
一方で、この国にはいまこんな言葉が溢れている。
〈クズをはびこらせるな。奴らは同じ人間じゃない〉〈屑の親の遺伝子から屑の子ができたんだな〉
〈犯罪者庇う国ってなんだよ。人の人権奪っといて自分の人権守ろうなんざ甘いんだよ〉
いずれもネット掲示板に躍っている。匿名で、いじめの加害少年とその親に罵声を浴びせている。
ネット上には、加害少年の実名と顔写真、さらに親の実名と顔写真がまとめてアップされている。
事件について語っているという一点では同じだが、両者の間にはあまりにも大きな隔たりがある。
孫を失った後も番台に座り続ける祖母の、身体性をともなう哀しみ。
まったく無関係の匿名の人々がまき散らす、インターネット上での怒り。
どちらに重みがあるか、論じるまでもないだろう。
だがこの国ではいま、後者の怒りの炎が猛烈な勢いで広がり、前者の切実な哀しみは
すっかり置き去りにされている。
ネットの書き込みはさらにエスカレートする。
〈加害者の父親が元警察官ならしょうがねーよな〉〈加害者は在日コリアンと判明した!!〉
いずれも事実とは異なる情報だ。だが、こうした誤報がまたたく間に拡散し、さらにバッシングが
繰り広げられる。(>>2-10につづく)
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