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★香山リカのココロの万華鏡:調査の「ゴール」が違う /東京
・昨年、滋賀県大津市で中2男子が自殺した問題。背景には、深刻ないじめがあったことが明らかになった。
市教委がこの生徒が自殺した後に全校アンケートを実施したところ、16人が「自殺のリハーサルを
するように強制されたと聞いた」などと回答を寄せていたという。しかし、その後、市教委は加害者とされる
生徒への聞き取りなどを経て、「いじめはあったが、それと自殺の因果関係は判断できない」との見解を示した。
これまでも自殺をめぐる問題で、「因果関係は特定できない」というフレーズが使われてきた。「職場での
いやがらせはあったが、自殺との因果関係は明らかではない」というように、「長時間の過酷な労働」
「上司からのハラスメント」「夫婦間の暴力」そして今回のような「学校でのいじめ」などが、「被害者の自殺との
因果関係ははっきりしない」と結論づけられてきたのだ。
こういった調査では、そもそものゴールが間違っている。因果関係を特定するのが目的なら、それは
「判断できない」という答えにたどり着くのは目に見えているのだ。証明できる唯一の人である本人が
もうこの世にいないからだ。
「原因はこれです」と言える人がいなければ、条件が厳密に整えられた科学の実験でもない限り、ひとつの
原因とひとつの結果との関係を証明するのはきわめてむずかしい。
今回の問題でも、やらなければならなかったのは自殺の原因探し、犯人探しや因果関係の証明では
なかったはずだ。まずは「深刻ないじめがあった」という事実を認め、なぜ起きたか、なぜ防げなかったか、
今後の対策は、といった具体的な検討を行うべきだ。
それにしても、学校でのいじめはなぜなくならないのだろう。「命の大切さを教える」とか「厳罰化を進める」と
いった対策では解決できない深い問題がいまの教育の現場にはあり、いじめを行う側の心も相当、ゆがめられ
追い詰められているのだと思う。なぜいじめたくなるのか。なぜ「いじめられてる」とSOSを出せないか。
もう一度、考えてみたい。(一部略)
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