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・高所得のお笑いタレントが民法の扶養義務を果たさず、母親が生活保護を受給していると
指摘された問題を受け、厚生労働省は、扶養が困難な理由を証明する義務を親族に課すなど、
運用を厳格化する方針を打ち出した。当事者や支援者らからは「生活保護から住民を遠ざけ、
餓死や孤立死を増やしかねない」と懸念の声が上がっている。
「悪いイメージで報道されるたびに、受給者への差別や偏見が広がらないかと不安を感じます」。
精神疾患があって働けず、生活保護を受給する千葉県の三十代女性は、制度への逆風に眉をひそめる。
病気の悪化で仕事を辞めた。次の仕事が見つからないまま貯金が尽き、自治体の福祉事務所に
駆け込んだ。職員は状況を詳しく聞いた後「若いから仕事はある。頑張って」と言うだけで、申請手続きを
してくれなかった。支援団体に相談し、後日、同行してもらうとすんなり申請できた。
扶養できる親族がいる場合、生活保護よりも扶養が優先される。申請時に親族のことを詳しく
聞かれた女性は、親族との関係が悪いことを説明した上で生活保護を認められた。女性は
「いろいろな家族のかたちがある。連絡を取りたくない人もいる」と訴える。
生活保護を申請しようとしても女性のように断られるケースは多い。反貧困ネットワーク事務局長の
湯浅誠さんは「扶養義務の運用が強化されると、申請を抑制する動きが強くなる恐れがある」と懸念する。
湯浅さんは、暴力団関係者による生活保護の不正受給事件が表面化し、旧厚生省から支給を適正に
決定するよう求める通知が出た一九八一年と、今の状況が「非常に似ている」と指摘。「行政が
申請を受け付けなくなり、八七年には、札幌市白石区で生活保護の相談をしていた母子家庭の
母親が餓死した事件が起きている」と警鐘を鳴らす。
市民団体の笹島診療所(名古屋市)で生活保護申請の支援をしている藤井克彦さんは「現在でも、
生活保護の申請時に扶養できる親族がいないか十分照会をしているはず」と厚労省の方針に疑問を
投げかけ、「必要なのはケースワーカーの増員ではないか」と語る。(抜粋)
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