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「変わる女と男の風景」-進む階層分解と結婚しない男たち- 山下悦子(女性史研究家)
・・・(前略)・・・
「均等法20年」で女も横並びではなくなり正社員とパート、派遣の格差も広がり階層分解がもたらされた。
数は少ないが高学歴で、才能や容姿に恵まれ、社会的地位の高い職業や肩書きを持つ女の登場により、
フツーの女、それ以下の女の生きる道は厳しくなりつつある。
結婚し子どもを産み育て平凡な家庭を築く、という様な私の世代までは存在していた「逃げ道」がなくなりつつあるからだ。
それは男の側の大きな変化に由来する。
男性の家庭における家事や育児の参加は、共働き家庭でも一日平均三十二分で、
十年間ほとんど変化がなかったという批判が意味を持ったのは、十年前までだ。
男女対等の家庭像を理想としたフェミニストの大きな誤算は、結婚もせず、家庭も持たない独身男が増えてしまったことにある。
一九九五年、ウィンドウズ95発売以降のIT革命は、年収百億円のサラリーマンや六本木界隈のIT成り金族をうみ出す一方、
リストラにおびえる大企業会社員や不安定なフリーター、所得、所属のないニートに至るまでの階層分解をもたらした。
成り金男に複数の女が群がり、貧乏な男は徹底的にもてない。
でも男は困らない。
バーチャルな世界でコンピューターの美少女と恋愛ゲームを楽しんだり、金を出せば風俗嬢のぬくもりを手に入れることができるからだ。
大企業の会社員の男でも過酷な仕事に費やす時間が多い分、私生活は自分のために使いたいとシングルを好み、
彼女がいてもなかなか結婚しようとしない。
「玉の輿」だ、セレブだと騒いでも、それを実現できる女はごく僅かである。
日本の男に見切りをつけた一部の女は、外国人へ目を向け始めるが、文化の違いや言葉の壁はたやすく超えられるものではない。
結局、「負け犬」や「オニババ」という言葉で、女が女自らを自己規定し、同性を差別化するようになってしまった。
いずれにせよ、勝ち負けという言葉が流行る背景には、一億総中流意識の崩壊と階層分解進行中の現実があるのである。