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■発信箱:ケーキ? ビスケット?=福本容子(論説室)
イギリスにいた頃、洋服の買い物には苦労した。身長155センチだと子供サイズなのだ。
ある日、店員さんに勧められ、仕方なく子供用を買った。するとレジで、普段はたっぷり取られる消費税がゼロに。
一応、自分が着る服だと“申告”すると、「関係ないよ」と笑われておしまい。
消費税率は今や20%だけど、物によっては5%や0%となる。新聞や本も、ずっと0%。
あの国で新聞や本に税金をかけたら、きっと人権問題ぐらいの騒ぎになる。
ちょっと厄介なのは食べ物系。ぜいたく品かどうかで20%の差がつく。
例えば同じチョコレート付きのお菓子でも「ビスケット」は20%、「ケーキ」ならゼロだ。
議会や裁判所を巻き込む大論争になったことがある。マクビティ社の「ジャファ・ケーキ」。
片面がチョコレートで覆われた丸いクッキーで、真ん中に薄いオレンジ風味のゼリーが入っている。
見かけは絶対ケーキじゃないけれど、メーカーは「日がたって軟らかくなるのがビスケットで硬くなればケーキ。
うちのは硬くなるかられっきとしたケーキ。小さいだけ」と主張し見事、税率ゼロを勝ち取った。
かたや、人の形をしたクッキーのジンジャーブレッドは20%だ。でも、例外がある。
チョコの使用が2個の目玉だけなら0%。そんなことを大真面目に決めている。
売る側には面倒くさ過ぎる制度だ。でも、そこまでやるの!とあきれるほどの細かさが納税者に納得してもらうポイント。
低所得の人には、一律いくら現金を配ります、とか、後で税金返します、なんて大ざっぱさ、上から目線ではだめなのだろう。
増税法案の審議に応じる、応じない、で延々と時間を費やしている永田町に比べ、
ケーキかビスケットかの論争は有意義で、ずっとくらしに近い。
毎日新聞 2012年04月27日 00時19分
URLリンク(mainichi.jp)
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