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★大鹿 靖明 (著)「メルトダウン」 第3章 放射能放出
「いま取り組もうとしているベントという作業によって大気中に放出されれば、酸素があるので
燃焼反応は起きますが、それは煙突の上で起きるので爆発的事象にはなりません」
おおむね、そういう趣旨のことを班目は言った。
寺田も下村もこのときのことははっきり覚えている。2人は、班目が「爆発する恐れはない」と
明言したことを記憶している。
官邸に集まった学者や行政マン、東電スタッフら原子力の専門家たちは何をたずねられても、
確信をもって責任のある回答ができなかった。菅が質問すると、本来専門家である保安院の幹部職員は
互いに目配せしてもじもじする。不審に思った菅が保安院の寺坂信昭院長に「あなた、原子力の
専門家なの?」とたずねたら、「いいえ、違います」という返事だった。寺坂は経産省キャリアの事務官で、
このとき、たまたま院長に就いていたにすぎない。東大経済学部を卒業して入省し、直近はスーパーなど
流通業界を所管する商務流通審議官だった。この国の原子力行政のトップはそんな有様だった。
(中略)
武藤と吉田所長が菅への「ご進講」役をつとめる。菅が「いったい、いつになったらベントをやるんだ」
と怒気を含んだ声で張り上げる。武藤が「電気の回復を待って電動で開けたいので、あと4時間は
かかります」、武藤のくどくどしい言い回しは聞いている者をいらつかせる。そんな武藤に吉田も
同調して「あと4時間必要です」と言う。
菅が激高する。「4時間もかかるのか!」
これまでの不満をぶちまける。「もう、東電はずーっと『あと何時間です』って言っている。
ずーっととそうじゃないか!」
すると、吉田は「とにかく必ずやります」と言って、発電所の図面を取り出して説明を始めた。
「どんなことがあっても、決死の覚悟で、決死隊をつくってやります」。すると、菅は納得したようだった。
決死隊をつくってやる―。その言葉に初めて菅は得心がいったのだった。
下村は吉田を見て、「こりゃ全然違うわ、官邸に来ている木偶の坊たちと全然違うわ」と思った。
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