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各地から「桜満開」の便りが伝わってくる。この国の人々の桜に対する思い入れは尋常でない。
毎年この時期の花見にかける熱意。それは、桜が日本人の心情に深く結びついているからだといわれる。
日本列島の春を象徴する花木で、パッと咲いてパッと散る。その美しさ、潔さ、はかなさが武士道と
重ね合わされたり、時には戦争や軍隊のイメージと結び付けられたりした。浅野内匠頭が切腹する場面で
ハラハラ散る桜は、あだ討ちドラマである「忠臣蔵」の悲壮感を決定づけているし、沖縄決戦に向かう
戦艦大和は、乗員が満開の桜を見つめながら出航するシーンで、その後の悲劇的な運命が暗示される。
そして、学校の卒業と入学の時の桜。どんな学校にも、校門や校庭に桜があった。咲き誇り、静かに散る桜は、
卒業生や入学生を見送り、出迎えた。私たちの記憶の中には、そんな桜の映像が残っている。出会いと別れ、
生と死…。いつでも、桜は人々の感情をかき立てる「装置」だった。
しかし、それには背景と仕掛けがある。一例を挙げれば、明治のはじめ、日本の学校のほとんどは
欧米と同様、9月入学だった。ところが、旧制高校や他の上級学校が、同じ秋入学の陸軍士官学校や
海軍兵学校などとの間で生徒を取り合い、競争が激化した。それで「先に優秀な人材を」と、4月入学に
早めたのだという。桜との縁もそれからのことだ。
「桜の花は戦死を美化するために導入された」―。大貫恵美子氏の「ねじ曲げられた桜」(2003年、
岩波書店)は、日本の軍国主義体制が進む中で、桜に意図的なイメージが与えられたことを詳述している。
「桜の花のように、若者は天皇のために自分たちの命を犠牲にするが」「靖国神社の桜の花に生まれ
変わることを約束された」という。「貴様と俺とは~」の歌い出しで知られる軍歌「同期の桜」の歌詞は、
はっきりそのことを示している。
>>2以降に続く
ソース:URLリンク(www.47news.jp)