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昨年10月に退任した安藤隆春警察庁長官が、「弘道会(山口組)壊滅作戦」を掲げ、
暴対法、組織犯罪処罰法、暴力団排除条例などを武器に、暴力団を徹底的に締め上げた人であるのはよく知られている。
暴力団組員や準構成員の人権を認めず、銀行口座を開かさせず、賃貸住宅に住めなくして、
ホテルや飲食店などへの出入りを制限、弾圧していった。
その方針を、片桐裕警察庁長官は受け継いだが、やはり新機軸は見つけたい。
それがネットの世界の"無法"を取り締まることだった。警視庁生活安全部長、警察庁生活安全局長などを歴任、
「生安畑」が長いことも、国民生活に深くかかわるネットの規制に走らせた。
樋口建史警視総監は、片桐警察庁長官の指示を受け、生活安全部に「2チャンネル特捜班」を立ち上げたが、
樋口総監もまた犯罪を誘引する書き込みが、掲載されることもある「2ちゃんねる」の"無法"を心よく思っていなかった。
つまり「2ちゃんねる捜査」は、人と時を得て、始まるべくして始まった。
ネットは、国民生活に完全に定着したが、そこで展開される事業の監督官庁が決まっていないことが多い。
DeNAやグリーの急成長で、4000億円市場が目前のソーシャルゲーム業界がそうである。
国民生活に密接という意味で消費者庁、コンテンツ産業で経済産業省、
通信で総務省、風営法の範疇で警察庁となる。しかし、業界が新しいだけに、
「業界団体を作らせて、そこに天下りを送り込んで監視する」というスタイルになっていない。そこに、目をつけたのが警察庁である。
警察官僚からみれば、子供の巨額課金利用、ゲーム代を稼ぐための援助交際などの
問題も起きているソーシャルメディア業界は、風営法で抱え込んだパチンコ・パチスロ業界と同じ発想で取り組める業界だと思える。
さらにはFX(外国為替証拠金取引)業界もそうだ。金融商品取引法で規制を受けているという意味で
監督官庁は金融庁だが、AV業者などがFX業界に進出しており、やはり警察が"進出"の機会をうかがっている。
「秩序なき自由」がネットの面白味だが、時間を経ると官僚が蠢き、
秩序を自分たちの権限で打ち立て、そこを「業界化」する。今、ネットの世界はそのターゲットになっている。