12/03/24 00:26:16.05 0 BE:2291739179-PLT(12066)
詩人の丸山豊に「月白の道」という本がある。軍医として赴いた雲南や北ビルマでの戦争体験を、戦後25年目に記した回想記だ。
私は24年前に読んだが、以来気になっていたことがある。
丸山は本の結びで《戦争にはまだ書けない部分が一点だけのこっている》と明かし、87年に出た復刊本でも《戦争については、
書けぬことと書かぬことがある。……それをどこまでも追いつめるのが勇気であるか、化石になるまで忍耐するのが勇気であるか、
私は簡単に答えることができない》と記している。復刊の2年後に没した彼が最後まで黙し続けたこととは……。
今月、丸山と同じ地域を転戦した品野実(元記者、故人)が書いた「一本のペン」という本を偶然読んだ。
丸山は書いていないが雲南で朝鮮人慰安婦たちを検診した話を生前品野にしていたと記した後、
捕虜の生体解剖について問うた時の丸山の反応をこう書いていた。《死刑にされるはずのスパイだから、と誰を弁護するともなく口を濁した》
品野は「異域の鬼」という別の著書で、雲南で生体解剖があったことを書き残していた。その本に巻頭詩を献じているのが丸山だった。【福岡賢正】
毎日新聞 2012年3月23日 西部夕刊
URLリンク(mainichi.jp)