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★大鹿 靖明 (著)「メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故」 講談社2012/1発行
ISBN-10: 4062174979 ISBN-13: 978-4062174978
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本文より
第2章 全電源喪失
それは官邸も同様だった。秘書官の一人が「いま原発に着きました」と大きな声をあげると、
秘書官室の庶務の女性が「良かったー」と泣きくずれんばかりの声をあげた。
危機は乗り越えられそうだ。かすかな光明が射してきた。このあと同日深夜から12日未明にかけて
電源車は続々と現地に到着している。
ところが、接続プラグが合わなかった。しかも電圧も合わなかった。総理はそんな報告を受けてビックリ
した。「合わないなんて……。電力会社なのに事前の準備が全然できていないんだ。そんなことってあるのか!」
そこで福島第一原発所長の吉田は2号機建屋内の動力変圧器につなぐことを考えた。しかし、2号機
周辺は瓦礫が散乱しており、電源車は近づけない。比較的被害の少ない2号機のタービン建屋の脇まで
電源車を移動させて、タービン建屋大物搬入口から動力変圧器のあるところまでケーブルでつなごうと考えた。
それには、200メートルのケーブルが必要だった。だが電源車が搭載しているケーブルはそんなに長くない。
現地から「長いケーブルを空輸できないか」との知らせを聞いて東電本店の対策本部はあわてて社内や
取引先に「200メートルぐらいのケーブルはないか」と問い合わせるが見つからない。
いったん女性スタッフが泣きくずれんばかりの歓声を上げた官邸は、「電圧が違う」「ケーブルの
長さが足りない」と次々入ってくる報告に愕然とするばかりだった。
やっと、原発所内に下請け企業が定検工事用に保管していたのをその企業の従業員が思い出し、
ケーブルがあると聞いて一同はホッとしたのもつかの間、いざそれを倉庫から取り出そうとすると、
今度は鍵がないという。せっかく電源車が到着したのに、現地から刻一刻と伝えられる「ケーブルが
足りない」「鍵が開かない」という知らせに、菅をはじめ、官邸の高官たちのイライラは炸裂せんばかりだった。