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「佐藤一等兵」日記
12月16日
朝七時半、宿舎前整列。中隊全員にて昨日同様に残兵を捕へるため行く事二里半、残兵なく帰る。
昼飯を食し、戦友四人と仲よく故郷を語って想ひにふけって居ると、
残兵が入って居る兵舎が火事。直ちに残兵に備えて監視。あとで第一大隊に警備を渡して宿舎に帰る。
それから「カメ」にて風呂を造って入浴する。あんなに二万名も居るので、
警備も骨が折れる。警備の番が来るかと心配する。
夕食を食してから、寝やうとして居ると、急に整列と言ふので、また行軍かと思って居ると、
残兵の居る兵舎まで行く。残兵を警戒しつつ揚子江岸、幕府山下にある海軍省前まで行くと、
重軽機の乱射となる。考へて見れば、妻子もあり可哀想でもあるが、苦しめられた敵と思へば、
にくくもある。銃撃してより一人一人を揚子江の中に入れる。
あの美しい大江も、真っ赤な血になって、ものすごい。これも戦争か。
午後十一時半、月夜の道を宿舎に帰り、故郷の家族を思ひながら、近頃は手紙も出せずにと
思ひつつ、四人と夢路に入る。(南京城外北部上元門にて、故郷を思ひつつ書く)
(「南京の氷雨」P25)