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東京・神田の和泉屋という酒屋が開店祝いにたる酒を通行人に振る舞った。ついには道路に多くの酔っ払いが横たわることになった--
簡単に意訳したが、140年前に創刊された小紙の前身、東京日日新聞第1号の記事の一つである
▲酔っ払って寝た人力車引きらは酒屋の「仁」を喜んだが、その妻子はひもじい思いをしたわけだ。
かくして記事は「仁過ぎれば却(かえ)って禍あるとは是(これ)ならん」との大げさな評言で締めくくられている。
紙面の中でもたわいない街ネタだが、何やら親しみを感じてしまう
▲遣欧使節の米国からの手紙や主婦殺人事件の記事が目を奪う創刊紙面だった。振る舞い酒の話は、
その中で息抜きと世相批評を兼ねたコラムのような役目を果たしている。小欄にすれば何かご先祖に出会ったような気分だ
▲140年間、変わる時代を報じた新聞は、変わらぬ人間も紙面に映し出してきた。
東日本大震災では空前の惨害を伝える紙面でコラムに何ができるかを、小欄も日々自問した。変わらぬ人の優しさや献身、
支え合いが生んだ多くの奇跡に後押しされて動いた筆だった
▲さまざまな「正義」が自己主張し、あふれる情報が個々に「真実」を名乗る今のネット社会だ。
その中でメディアの最後のよりどころは事実の報道における誠実と、言論の「まともさ」の感覚だろう。
その双方において新聞も多くのことを学んだ震災後の日々だった
▲変わっていくものと、変わらぬものが激しくせめぎ合う現代である。私たちは人間のまともさに深くおもりを垂らし、より深い真実を読者に伝えられるか。
日々、新聞人が自問せねばならぬ次の10年だ。
毎日新聞 2012年2月21日 0時17分
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