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「どんな状況だったのですか」
「『そんなもの、バカと言っとけ。伝染らないって言っとけ』と娘に言いました」
「それで?」
「それだけです」
しばらく沈黙が流れた。話したくなさそうだった。私は話題を変えた。しばらく別の内容を聞いて、また話を戻した。
「先ほどの放射能が伝染る、という話なんですが」
緊張が解けたのか、木下さんは今度は話してくれた。群馬県に避難してきて、
4月から地元の小学校に通い始めた時。小5の娘が同級生にこう言われた。
「お前、放射能から逃げてきたんだろ?」
「そうだよ」
「近寄るな~!」
そう言われたというのだ。
話を聞いて木下さんは怒り狂った。「バッカじゃないの!」「どうせ男でしょ、そんなこと言うの!」
相手の親や学校には抗議したのだろうか。していない、と木下さんは言った。
「その話を聞いて、私も疲れ果ててしまいました」
この話を娘がしたのは9月になってからだ。クラブ活動に車で送る途中、
後ろの座席に座った娘が突然話し始めたというのだ。おそらく、彼女なりに親や弟の前では我慢していたのだろう。
そして彼女の中で整理がつき、車内で母娘2人きりになって、初めて告白したのだろう。
相手の名前など、それ以上詳しい話は木下さんも知らなかった。酷すぎて娘にそれ以上聞けない、というのだ。