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「仁徳天皇陵」に葬られているのは、本当に仁徳天皇か。
半世紀前、天皇陵を巡る疑問を初めて世に問いかけた一冊が、
『古墳の発掘』だった。それ以降、書き続けた一般書は100冊を超す。
多くの研究者や歴史教科書に影響を与えた考古学者は、80歳を超えてなお、
日々の発見に心躍らせる。
◇
昭和30年代、僕は大阪府立高校に勤める傍ら、奈良県橿原市で古墳群の
発掘を指揮していた。その最中の1964年春、東京大の井上光貞先生が、自身の著作
『日本の歴史(1)神話から歴史へ』(中央公論社)の考古学担当に抜擢(ばってき)してくれました。
その夏、発掘が終わると、扇風機もない大阪の自宅で、氷柱を毎日2本バケツに入れて
机の左右に立て、1週間ほど懸命に書いた。原稿を取りに来た中央公論の編集長から、
「新書を1冊書きませんか」と誘いを受けたのが、『古墳の発掘』。「『天皇陵』にしたい」と言うと、
「天皇陵をいきなり書き出しても分からない」。だから前半を古墳入門編とし、
後半で「タブーの天皇陵」に力を注ぎました。
>>2へ続く
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