12/02/04 03:12:29.14 DPUG1/UL0
いまだに代議士諸公は天皇制について皇室の尊厳などと馬鹿げきったことを言い、大騒ぎをしている。
天皇制というものは日本歴史を貫く一つの制度ではあったけれども、
天皇の尊厳というものは常に利用者の道具にすぎず、真に実在したためしはなかった。
藤原氏や将軍家にとって何がために天皇制が必要であったか。
何が故に彼等自身が最高の主権を握らなかったか。
それは彼等が自ら主権を握るよりも、天皇制が都合がよかったからで、
彼らは自分自身が天下に号令するよりも、天皇に号令させ、自分が先ず
まっさきにその号令に服従してみせることによって号令が更によく行きわたることを心得ていた。
その天皇の号令とは天皇自身の意志ではなく、実は彼等の号令であり
彼等は自分の欲するところを天皇の名に於て行い、自分が先ずまっさきにその号令に服してみせる
自分が天皇に服す範を人民に押しつけることによって
自分の号令を押しつけるのである。
自分自らを神と称し絶対の尊厳を人民に要求することは不可能だ。
だが、自分が天皇にぬかずくことによって天皇を神たらしめ、それを
人民に押しつけることは可能なのである。
そこで彼等は天皇の擁立を自分勝手にやりながら、天皇の前にぬかずき、
自分がぬかずくことによって天皇の尊厳を人民に強要し、その尊厳を利用して号令していた。
それは遠い歴史の藤原氏や武家のみの物語ではないのだ。
見給え。この戦争がそうではないか。実際天皇は知らないのだ。
命令してはいないのだ。ただ軍人の意志である。
満洲の一角で事変の火の手があがったという。華北の一角で火の手が切られたという。
甚しい哉、総理大臣までその実相を告げ知らされていない。
何たる軍部の専断横行であるか。
しかもその軍人たるや、かくの如くに天皇をないがしろにし、
根柢的に天皇を冒涜しながら、盲目的に天皇を崇拝しているのである。
ナンセンス! ああナンセンス極まれり。
しかもこれが日本歴史を一貫する天皇制の真実の相であり、日本史の偽らざる実体なのである。
『続堕落論』 坂口安吾 URLリンク(www.aozora.gr.jp)