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前々回に続いて今回もクイズ。正解を聞いても「えっ、なぜ?」と反問したくなること請け合いの難問だ。
A、B、Cの三つの箱がある。一つだけ宝物が入れてある。貴君はAを選択した。出題者が残り二つのうち、
宝物の入っていない箱Bを開けて貴君に示した。
さて、貴君はここで最初のAをそのまま選び続けてもいいし、Cに変更してもいい。どうするのが確率論として正しい選択か。
正解はCを選ぶである。Cに宝物が入っている確率は3分の2だからだ。えーっ、AもCも確率3分の1でいっしょではないの?
これはモンティ・ホール問題という有名な「事後確率」の話。なかなかややこしい議論で、解説するには紙幅が足りない。
ネットに詳しい説明がたくさんあるので、自分で調べてみてください。
さて、ここからが本論。
正月にシカゴ大学の山口一男教授(社会学)の「ダイバーシティ」(東洋経済新報社)という本を読んだ。風変わりな本だ。
(1)童話「六つボタンのミナとカズの魔法使い」(2)シカゴ大のゼミのやりとりらしき戯曲風読み物の2本立て。とても知的で面白い。
最初の童話はミナという少女が魔法使いの島で「生きる力」を獲得していく一種の教養小説。ミナはここでさまざまな試練に出合う。
タネ明かしすれば冒頭のクイズもその一つである。読者はその試練を通して、「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」
「ダイバーシティー(多様性)」など、社会学と経済学のさまざまの概念を学ぶ。
この本のいい点は、そうした知識が「良く生きる」ための武器になることを示していることだ。ミナという少女の成長物語にすることで、
それが鮮明になっている。(>>2-3へ続く)
毎日新聞 2012年1月25日 東京朝刊
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