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福島第一原発が全電源を喪失し「メルトダウン」した原因は何だったのか。
元原子炉設計者でもある大前研一氏は、緊急調査を行ない、「福島第一原発事故から何を学ぶか」
最終報告書を細野豪志原発相に手渡した。一連の調査の感想を大前氏が語る。
実は、私は今回、神様を信じることにした。福島第一原発事故を調査・分析すると、
神様が人間の知的に怠慢だったところを知悉(ちしつ)していて、それをすべて潰していったとしか思えないのだ。
まず地震で5系統の外部交流電源を全部破壊・切断し、次に津波で非常用電源を徹底的に破壊した。
津波は原発の隅々まで回り込み、地下に設置してあったディーゼル発電機やバッテリーはもとより、
山の崖の壁面などに設置してあった電源取り入れ盤も、ことごとく水没させた。
人間が考える実験装置では、あそこまで意地悪なことはできない。
原子炉の設計者は、過去に起きた事故のパターンを72通りも学び、そのすべてに厳重な対策を施している。
だが、事故というものは、およそ人間が想定していなかった原因で起きている。
たとえば、かつてアメリカのEBR-2という高速増殖炉の実験炉がメルトダウンした事故では、
工事業者が原子炉容器の中に残してきたジルコニウム片が、運転を始めたら舞い上がって
冷却流路を塞いでしまい、燃料が熔融する事態になった。
今回の福島第一原発事故でも黒い煙が出たが、あれはメルトダウン、メルトスルーが起きて
熔けた燃料が格納容器の底に落ち、工事業者が残してきたゴムか、格納容器の鉄板とコンクリートの間にある
配管・配線の被覆など炭素を含む不純物が焼けた証拠だと、私は3月19日の時点で指摘し、
YouTubeで発表している。それ以外に黒い煙が出る理由はないのだが、原子炉エンジニアたちは、それを頑として認めなかった。
人間の頭で考えた科学物体は、必ずどこかに欠陥がある。なぜなら、科学の世界は演繹法
(最初の前提から次の前提を導き、それを繰り返して最終的に必然的な結論を導き出す方法)により、ロジックで考えていくからだ。
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