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事故発生直後、経済産業省原子力安全・保安院が「炉心溶融(メルトダウン)が起きている」と
説明しながらその後、見解が二転三転したのは官邸の横やりが原因だった。
三月十二日午後二時ごろ、作業着姿で記者会見した中村幸一郎審議官は
「(1号機は)炉心溶融の可能性がある。炉心溶融がほぼ進んでいるのではないか」と説明した。
報告書によると、中村審議官は原発周辺の放射線量上昇や、1号機が
冷却機能を失って時間がたつことから炉心溶融が進んでいると判断。
会見直前に寺坂信昭院長(当時)に報告。寺坂氏は
「(事実がそうなら)そのように言うしかない」と、公表を了承した。
その後、官邸で保安院の広報に懸念が出ており、発表前に官邸に
情報提供するよう求める声があったと知った寺坂氏は、複数いた広報担当者に
「発表の際は事前に官邸の了解を得るように」と指示した。
中村審議官には人を介し、発言に気を付けるよう注意した。
一、二時間おきに開かれていた保安院の会見はこれ以降、官邸の了解を得るため
数時間に一回に減った。広報官は中村審議官の申し出により交代。以後の広報官は
「炉心の状況は不明」などと言葉を濁し、四月まで炉心溶融を認めなかった。
官邸は東京電力にも横やりを入れていた。東電の福島事務所は十二日夜、
報道関係者が傍聴できる会議で爆発後の1号機の写真を公表した。
官邸側は翌十三日、事前連絡なしに公表したと東電の清水正孝社長(当時)に注意。
清水氏は現場に、発表や資料の公表は事前に官邸の了解を
得るよう指示した。この影響で、重要な情報の広報が遅れた。
十四日早朝、3号機の格納容器の圧力が異常上昇。東電は官邸詰めの社員を通じ、
発表の了解を求めた。しかし、官邸内で調整がつかず、東電は広報を見送った。
この情報は同日午前九時十五分、保安院が説明した。
2011年12月27日 朝刊
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