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唯一無二の学者
? 代数多様体に対する普遍的なコホモロジー理論 ?
数理科学研究科代数分野 教授
寺杣 友秀
代数多様体とコホモロジー
次に幾何学的対象だが、例えば放物線ならば我々は苦も無く全体像を把握できる。しかし上に挙げたカラビ・ヤウ多様体のような高次元の複雑な対象となると、もはや我々の幾何学的直感は無力である。
19世紀から20世紀にかけて活躍したポアンカレは幾何学的対象に対して、理解しやすい代数的な対象を対応させるアイデアを提出した。
その中でも重要なものの1つが「コホモロジー」である。これはもはや幾何学的直感の効かないような対象に対してもその「形」についての重要な情報を理解可能な形で示してくれるのだ。
特に代数多様体に対してコホモロジーを考えると、代数多様体の上での解析学と見事につながる。
20世紀も中頃になり、数論的な観点からヴェイユは代数多様体にはポアンカレのコホモロジーとはまったく異なる数論的なコホモロジーが存在することを示唆した。
その後グロタンディークをはじめとする研究者によって様々な数論的なコホモロジーが発見されたのである。ポアンカレのコホモロジーとこれらの数論的なコホモロジーはまったく異なる素性を持つが共通点も多い。
そこでグロタンディークが考えたのは代数多様体にはまず「モチーフ」という根源的なコホモロジーが対応し、これらのコホモロジーはすべてモチーフから導き出されるという筋書きだ。
モチーフを理解することは現代数学の重要な課題で多くの研究者を魅了している。
現代数学の「コホモロジー」と「モチーフ」の考え方で、新たな等式の発見や、今までに見つけられていた等式の一般化をやってみたい。これが寺杣の研究の動機だ。それによってモチーフに対する理解も深まる。