12/09/17 06:59:24.18
>>444
つづき
黒木玄著、「数学の学び方に関するヒント―数学科の学生の皆さんへ―」 (1996年度前期)
URLリンク(www.math.tohoku.ac.jp)
抜粋
どんなに速く読んだとしても、論理的かつ直観的な理解が伴わないのでは、数学の勉強の仕方として無意味である。厳密に論理をフォローするだけでも大変なのに、さらに直観的な理解をも身に付けようとすれば、膨大な時間が取られるのが普通である。
最後に強調しておきたいことは、数学の研究も自然科学と同様に帰納の学問であり、演繹の学問ではないということである。この点は多くの人が誤解している点である。
数学科の卒業生でも誤解しているかもしれない。 (この点において、数学科の教官は大いに反省する必要があると思われる!)
実際の数学の研究の場では、特殊な多くの例の集積から、その様子がかなり明らかになったところで、多くの予想が立てられるのである。予想を立てるという作業は演繹的ではなく帰納的な作業である。
予想の多くはすぐに証明もしくは反証されるが、予想の幾つかは証明も反証もされないまま、その特別な場合に関する結果のみがさらに集積して行くのである。その特別な結果の集積は自然科学における実験・観察の部分に相当している。
つまり、論理的 (演繹的) に証明された結果や特殊な場合における計算結果は、理論建設という帰納的な試みの材料とされるのである。このようなことは、数学を真面目に勉強していれば自然に気が付くことである。
(引用おわり)