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抜粋
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[p 進タイヒミュラー理論]
複素数体上の双曲的代数曲線とそのモジュライ空間の一意化理論としては, (ケーべ
の一意化定理, ベアス理論などを含む)タイヒミュラー理論が古典的に確立されていま
す. 一方, p 進体上の(偏極)アーベル多様体とそのモジュライ空間の一意化理論として
は, セール・テイト理論が1960年代に確立されています. しかしながら, p 進体上の
双曲的代数曲線とそのモジュライ空間の一意化理論は, 望月さんの研究以前には満足の
いくものがほとんどありませんでした. (マンフォード一意化理論はありましたが, こ
れは, タイヒミュラー理論ではなくショットキー一意化理論の類似です.)
タイヒミュラー理論は, 通常の定式化では純に複素解析的なものであり, p 進的類似
を求めることは不可能に思われます. そこで, 望月さんは, タイヒミュラー理論の固有束
による定式化に着目し, これを足がかりにしてp 進タイヒミュラー理論を構築していき
ました. その際, 技術的な核となったのは, 正標数代数多様体の上のクリスタルの理論や
p 進代数多様体のp 進ホッジ理論などです. その結果, 代数曲線とそのモジュライ空間
の望ましいp 進一意化理論が完成し, 曲線のモジュライ空間上の標準フロベニウス持ち
上げと標準座標, 曲線の標準持ち上げ, 曲線の数論的基本群のPGL2 への標準表現, な
ど斬新かつ基本的な対象たちが続続と発見されました. これらの結果は, 約200ペー
ジの大論文[1] と500ページ超の大著[2] にまとめられました.
p 進タイヒミュラー理論の応用としては, 望月さん自身によって, 曲線のモジュライ
空間の既約性の別証明や, 遠アーベル幾何(絶対p 進グロタンディーク予想)への応用
などが得られています.