12/05/23 22:04:49.98
>>437
(つづき)
ガロアの群論は、方程式以外でも幅広く役に立ちます。「動き」「変化」「対称性」が関わるものなら何にでも応用できる、といっても過言ではありません。
したがって、その後、数学のさまざまな分野に応用されたばかりではなく、他の科学、例えば、物理学、化学、薬学、生命科学、情報科学などにも応用されるようになりました。
これまでガロア理論の解説書は何冊も刊行されていますが、本書がそれらと大きく異なるのは次の3点になります。
第一に、これまでの本は、「お話だけで終わっている」か「すごく難しい」か、のいずれかだと思いますが、本書はその中間を狙いました。省略を最小限に押さえながらも、できるだけ理論のキモが明快にわかるよう工夫したつもりです。
例えば、第2章の「2次方程式でガロア理論をざっくり理解」だけ読めば、急所のアイデアはすぐに納得いただけるでしょう。
また、第4章では、図形の対称操作の群論を使って、とにかく抽象的なガロア理論を図形的イメージ化しました。
さらに第二に、数式だけで記述せず、できるだけ言葉によって記述しました。
群論がガロアの頭の中にどう芽生えたのかを考えることは、数学の外側の作業なので、日常言語が適していると思ったからです。
そして第三に、最終章でガロア理論のその後の展開を解説しました。基本群に関するポアンカレ予想や被覆空間のガロア理論などで、現代数学へのインパクトをご覧いただきます。
でも、この本で最も書きたかったことは、ガロア少年のかっこよさです。
不良で、生意気で、はねっかえりで、純粋で、無軌道。
かっこいい少年の全条件が揃っています。著者は、その後200年の数学を変革したガロアの発想力は、これらの奔放で反骨的な性格と無縁ではなかったと推測しているのです。
本書でどうぞ、そんなガロアと、そして数学そのものに恋をしてくださいませ。
(引用おわり)