12/03/31 08:54:55.69
>>263
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ブルバキと「数学原論」 斎藤毅
(抜粋).
(つづき)
4. ブルバキと現在.
このように, 輝かしい成功をおさめた「数学原論」ですが, 90 年代になって出版さ
れたのは「可換代数第10 章」1 冊があるだけです. これから書かれる巻はもしあると
しても, ごくわずかでしょう. 21世紀に生きる私たちにとって, 「数学原論」はもはや
過去のものなのでしょうか?
今の数学における「数学原論」の影響を推し測ることは, 思ったより難しいことか
もしれません. というのは, それは空気や水のようにいたるところに行きわたり, 今の
数学の土台をなしているからなのです.
別の影響は, 数学の記述に見られます. 定義, 定理, 証明の羅列というブルバキの文
体, そして, 抽象的, 公理的な構成. これらは今の数学の本, 教科書, 論文で, ふつうに見
られるものです. 「数学原論」の続きが書かれなくなったのは, 他の数学者もブルバキ
のように書くようになったからということも一因のようです. メンバーの1 人だったボ
レルは, 「(他の著者による) 新しい本の中にも, ブルバキのスタイルで書かれたものが
あった... (ブルバキが同じ主題について書いたとしたら, それは) 無駄な二度手間とな
るだけだったろう」(ブルバキとの25 年, アメリカ数学会Notices 45 (1998 年)) と振り
返っています. それはともかく, 今もブルバキは数学に大きな影響を, 意識にのぼらな
いところで, およぼし続けているのです.
(つづく)