13/03/19 00:46:48.77 aaxG0XxG0
この本は、福島第1原発事故について、綿密かつ多角的な取材により迫った最新のドキュメンタリーであり、
大変読み応えがあります。
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船橋洋一(2012)『カウントダウン メルトダウン 上』,文芸春秋社,pp.221-222.
福島県は福島第1原発から50キロ圏内に行政区域を持つ市町村に対して安定ヨウ素剤を配布した。
しかし、県知事は決定権限がありながら、住民等及び各市町村に対して、ヨウ素剤の配布・服用指示はしなかった。
被曝医療マニュアルには、県は、国の判断を受けて指示を出すオプションと、県が独自に判断するオプションの
2つの選択肢が記されている。
にもかかわらず、県は「独自に判断するオプション」を都合よく忘れた。
それだけでなく、三春町のように独自の判断で住民の放射線防護を図った自治体を抑え込もうと試みた。
知事の権限の不行使が、多くの市町村でヨウ素剤の配布・服用が行われなかった要因の一つとなった。
この間、ERCで働いた原子力安全委員会の被ばく防護の専門家は、福島県庁の対応について
後に次のように指摘した。
「県知事の判断によって服用のリスクが生じることは避けたい。しかし、それによって被曝のリスクが
生じることは見て見ぬふりをするということだった。(福島県は)被ばくのリスクと、ヨウ素の吸引によるリスクと
安定ヨウ素剤を飲むことのリスクのバランスをきちんと考えなかった。安定を保ちたい、県が考えていたのは
それだけだった。騒ぎにつながることはことごとく避けよう、過去のいろいろな知見を覆すことは避けようという
気持ちが、いろいろな場面で強く働いた」
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