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「2061年3月11日」
遂にこの日がやってきた。
じいさんが父さんに良く言っていた。「あれにむやみに触るでない。触ると日本は終わるかもしれない。もうだめだ。」
父さんも言っていた「何回かやったけどやっぱりあれを取り出すのは無理だ。人間の力では制御できないんだよ。」
果たしてそうなんだろうか?僕は考え、勉強し続けた。原発技術者の子供というそしりを受けながら。
そして父や祖父と同じ職業を選んだ。しかし俺は現場を志願した。
「F1-2号機燃料サルベージチーム」これが俺のチームの名前だ。
3代同じ仕事をすることを人は「なぜこんなことを・・」と言う。しかしそれでいいのだ。
最も激しく損傷した2号機の燃料サルベージ回収するのが使命であり、過去50年日本が背負ってきたカルマである。
この50年の間に色々な物を開発してきた。高線量耐圧スーツ、高線量対応機器類、高線量防御ロボット
今迄失敗してきた方法を改め、新しい回収方法も考案し開発した。これは俺の特許だ。
この仕事を選んだことに悔いはない。結婚して子供も5人産んだ。全てはこの日の為に準備してきたので憂いはない。
俺が失敗しても5人のうちの誰かがまたやってくれると思いたい。
格納容器に入る。50年たってもすごい線量だ。昔の装備なら5分持たずに死んだだろう。
しかしこの新型スーツは全てを完全遮蔽する新型金属繊維でできている。耐熱性も2000度だ。
安全確認して任務は続行。
溶け落ちた「象の足」に接近する。ここで新型カッターと搬送機の出番だ。
順調に作業は進む。チームで何百回も訓練した結果だ。
格納容器下部の燃料撤去はほぼ終わった。
次は圧力容器そのものだ。と思った瞬間、上から溶け落ちた燃料と汚染水が一気に崩壊して落ちてきた!
「くそ!まだ溶けてんのか!」と思いながら機材を持ちながら他の二本の手でメンバーの上に
落ちてきたでかいデブリを受け止め、払った。
そう、俺の手は放射能の奇形で4本ある。それが俺をここに来させる運命の始まりだったのだ。
デブリの温度は予想以上に熱かった。手に穴が開いた。「チッ、こんなことになるとは思ってたよ!」
2000度耐熱のスーツに2500度だから穴が開く。それはどうしようもない。開発が間に合わなかったのだ。
あとは時間との戦いだ。全部のデブリを完全防御の水棺容器に詰めて行く途中、俺の手のうち2本は完全に露出した。
手が溶け、凄い吐き気が俺を襲う。でもこれはやりきらないといけない。日本のみんなが待ってるんだ。
完全に密封終了確認して全員撤退命令。
朦朧とする俺に聞く副班長「班長早く!」
しかし体がもう動かない。「動けないからお前らだけでさっさと撤収しろ!これは命令だ!助けにも来るな!」
視界がぼんやりしてきた。チームが撤退する様子が見える。
祖父さんが造ったこのプラント、オレなんとかしたよ。。。。
これでなんとかなるかなあ・・・・?