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長時間低線量被曝の脅威
2、アブラム・ペトカウとは―肥田舜太郎、鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威』より
『放射線の人体に対する影響の医学的な解明を阻んでいた壁の一つは
放射線に対する細胞膜の強大な障壁だった。アブラム・ペトカウは1972年
マニトバにあるカナダ原子力委員会のホワイトシェル研究所で全くの偶然から
ノーベル賞に匹敵する次のような大発見をした。即ち、「液体の中に置かれた細胞は
高線量放射線による頻回の反復放射よりも、低線量放射線を長時間放射することによって
容易に細胞膜を破壊できる」ことを実験で確かめたのである。
ペトカウは牛の脳から抽出した燐脂質でつくった細胞膜モデルに放射線を照射して
どのくらいの線量で膜を破壊できるかの実験をしていた。エックス線の大装置から
15.6 シーベルト/分の放射線を58時間、全量35シーベルトを照射してようやく細胞膜を
破壊することができた。
ところが実験を繰り返すうち、誤って試験材料を少量の放射性ナトリウム22が混じった
水の中に落としてしまった。燐脂質の膜は0.00001シーベルト/分の放射を受け、
全量0.007シーベルトを12分間被曝して破壊されてしまった。彼は何度も同じ実験を繰り返して
その都度、同じ結果を得た。そして、放射時間を長く延ばせば延ばすほど
細胞膜破壊に必要な放射線量が少なくて済むことを確かめた。
こうして、「長時間、低線量放射線を放射する方が、高線量放射線を瞬間放射
するよりたやすく細胞膜を破壊する」ことが、確かな根拠を持って証明されたのである。
これが、これまでの考え方を180度転換させた「ペトカウ効果」と呼ばれる学説である。
人体の細胞は全て体液という液体に包まれている。体内で放射されるアルファ線、ベータ線
などの低線量放射線は体液中に浮遊する酸素分子に衝突して、電気を帯びた活性酸素に変化させる。
荷電して有害になった活性酸素は、電気的エネルギーで、内部を守っている細胞膜を破壊し、大きな穴を開ける。
その穴から放射線分子が細胞内に飛び込み、細胞内で行われている新陳代謝を混乱させ、
細胞核の中にある遺伝子に傷をつける。遺伝子を傷つけられた細胞が死ねば何事も起こらないが
生き延びると細胞は分裂して、同じところに同じ傷を持つ細胞が新しく生まれる。分裂は繰り返され
内臓組織は細胞がたえず生まれ変わって生き続けるが、傷もそのまま受け継がれ、
何かの機会に突然変異を起こす。細胞が内臓、諸臓器を構成する体細胞なら白血病、癌、血液疾患
などの重篤な慢性疾患を起こして死に至らしめる。
また、生殖に関わる細胞なら代々、子孫の細胞に傷が受け継がれ、何代目かの子孫に障害を発生させる。
これがペトカウ効果説に導かれた低線量放射線の内部被曝の実相である。』
『グールドはコンピューターを駆使して、増加している1319郡に共通する(乳がんの)増加要因を探求し
それが郡の所在地と原子炉の距離に相関していることを発見した。即ち、原子炉から
100マイル以内にある郡では乳癌死者数が明らかに増加し、以遠にある郡では横ばい
または減少していたのである。乳癌死者数の地域差を左右していたのは、軍用、民間用を問わず
全米に散在する多数の各種原子炉から排出される低線量放射線だったのである。
1996年にグールドはこの調査結果をニューヨークの「四つの壁と八つの窓(Four Walls Eight Windows)」
という小さな出版社から『内部の敵』という書名で出版した。
書名は、人間を体内からゆっくり破壊する低線量放射線という敵と、データを改ざんしてまで
それを隠蔽し続ける国内の敵を意味している。』