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>>277の続き
しかし、この聴力の損失は「音を聞かせる前に抗酸化剤のN-アセチルシステイン(NAC)を投与することで、ほぼ完璧に防止できた。
聴力の損失は平均で約5デシベルだった。人間であれば、おそらく聴力が弱まったことにさえ気づかないだろう」
と、ミシガン大学クレスギ聴覚研究所で聴覚生化学部門を率いるジョケン・シャクト氏は電子メールで述べている。
モルモットや、ペルー原産の齧歯(げっし)類、チンチラを使った研究では、数年前から同様の結果が示されてきた。この2つの動物は聞こえる音の範囲が人間に近い。
また、患者の治療にNACを使用した医師たちからも単発的な事例報告が寄せられており、やはり期待を持たせる内容となっている。ただし、ダニエルソン教授によると、人間を対象にした本格的な二重盲検試験はまだ行なわれていないという。
聴覚に損傷を及ぼすほどの騒音に人間をさらすことが倫理的に許されるかが問題視され、臨床試験の実施を阻む障害の1つになっているのだ。
しかし、軍隊では耳をつんざくような騒音が日常茶飯事となっている。そこで、海兵隊サンディエゴ新兵訓練所では
6週間の入隊訓練の一環として、1月から新兵たちに抗酸化剤を投与する予定だと、海兵隊関連のニュースを扱う『マリーン・コーズ・タイムズ』誌は報じている。
騒音は国民全体の問題でもある。米国言語聴覚学会(ASHA)によると、全米の難聴者は2800万人にのぼるという。
とくに軍隊では、常時聞こえてくる爆発や発砲、衝撃波が原因で、難聴が蔓延している。
米空軍の文書には「騒音性難聴は急速に増加し、今や米軍の兵士に最もよく発生する労働災害になっている」と記されている。
この労災の補償には年間2~3億ドルの費用がかかっており、発生件数は1年当たり30万件近くに及ぶ。