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「僕は巨人をちょっと羨ましいと思うことがあるんです」
宮本がこう切り出して例に挙げたのが、「赤い靴下」の話だった。
ある試合の日。ヤクルトの中堅選手が真っ赤な靴下を履いて球場にやってきたのを見て、それに無性に腹が立ったというのである。
「だって……男が赤い靴下ですよ! どう思います?」
こう問われてちょっと言葉に詰まった。
ただ、次の言葉にはこの男が抱く強いチームのあるべき姿が強烈に込められていて、妙に納得させられた。
「だって強いチームというものには、必ず規律があるじゃないですか」
「巨人を見ていると、やっぱりそういう規律を感じるんです。ヒゲはいけないとか、金髪はダメだとか……。
傍から見たら小さなことかもしれないけど、野球に全力を注ぎ込むために、全員が守らなければならない決まりが巨人にはある。
今のヤクルトはそういうのが薄れてしまって、てんでバラバラなんです。だからちょっと巨人が羨ましい」
ヤクルトが強かった野村克也監督時代には、茶髪、ヒゲはもちろん禁止。その他にもドレスコードや暗黙の決まりがいくつもあった。
それらはすべて、野球に集中し、勝つためのものだった。規律を破って少しでもチャラチャラした服装をしているのを見つかると、監督からの厳しい叱責も飛んだ。
強かった頃のヤクルトには確かに規律があったが、それが次第に薄れてきてしまっている。宮本にとって、その象徴が「赤い靴下」だったわけである。
「だから本当は、チームが赤い靴下はダメだって決まりごとを作らなければいけないんです。そういう決まりがないから、あんな靴下を履いて球場に来る選手も出てしまう」
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