06/06/20 21:27:37 d/b6R34b0
「吉岡…夏美さん?」
うしろからいきなりそう呼び止められた夏美は、ビクッとして振り返った。
「え? ウソ!薫? 薫じゃない!?」
松田薫が失踪して2年の月日が経っていた。
薫の同級生だった夏美は、今現在高校2年生になる。
「やっぱそうだ。久しぶりだね。すぐにはわからなかったよ。制服、変わってたし・・・背も伸びたんじゃない?」
華やかな雰囲気を持っていて行動力はあるが、思慮に欠ける薫に対し、お嬢様的な女性らしさが溢れ、勉強も上位をキープしていた夏美と
それぞれのタイプは対照的だが、彼女等の通っていたマンモス中学において、この2人はその美貌において抜きん出た存在だった。
「どうしてたのぉ? でも元気そうでよかった。時間ある?積もる話、聞かせてよ。」
中学時代は非常に仲のよかった二人だったから、2年間のブランクも 話題を盛り上げこそすれ、唐突な再開に対するギモンが夏美の脳裏に
よぎらなかったのは 仕方ないことだったかもしれない。
「ううん、今日はね。夏美にプレゼント持ってきたんだ。実は仕事で、遠いところに行っていてね、そこで手に入れたイヤリング、
とっても似合うと思うよ。
はいこれ。 私はまだやることがあるからこれで帰るね。」
そう言い残すと、残念そうな夏美の視線を背中に浴びながら、薫の姿は遠ざかって行った。
ものの数分後、うつろな視線をした夏美が、フラフラと黒塗りの高級車に近づいてきた。
「あぁら、夏美、いらっしゃい!」
黒塗りの高級車のリアドアが開くと、そこから薫が出てきて、夏美を後部シートに誘った。
夏美の両耳に、先程のイヤリングがしっかりしてあることを確認した薫は、運転士に一言だけ「行って」と告げた。