02/11/04 01:49
少しは気を許してくれたのかと思ったのに、彼自身のことを聞こうとすると俯いてしまって、
その表情さえ見えない。
ただ、この反応を見る限りは、この家出少年の家出の原因は家族関係のこと、くらいは見当がつく。
「…ま、今晩は泊まっていけばいいよ」
小さな動物の頭を撫でる仕草で、彼の髪に触れると、怯えたようにビクッと
身を震わせた。
「誰かに…触れられるのは嫌い?」
「…」
シンジはうつむいたままかぶりをふる。
NOという意味ではなく、おそらくは「わからない」と「答えたくない」の意味で。
「じゃ、俺のことが怖い?」
「…いえっ」
そう答えながらも身を引く彼を放したくなくて。
「…あ…?」
抱きしめるとフワと石鹸の匂いがした。
「そのへんの、勝手に使えよ」と言ったのは俺だ。知っている筈の、馴染んでいる筈の
石鹸の匂いに、なぜ俺はこんなにドキドキしてしまっているんだろう。
シンジはそのまま、俺にされるままになっているから、俺は勘違いしてしまいそうになる。
きっと彼は、ただ…そう、ただ、”親切なおじさん(苦っ)”に失礼なことをしてはいけないと
思っているだけなのだ。
「…よかった」
「え?」
「ちゃんとあったまったみたいだね」
そう、これは彼の好意ではない。…きっと。
「…いっしょに、寝ようか」
「…はい」
どうせ、布団は一つしかないのだから、そうするしかないのだが、妙に照れてしまって
彼の顔を見られなかった。
なかなかハァハァ展開になりません…