02/09/03 13:48
マターリいきましょうよ、マターリ。というわけでマターリっぽい話を。
情事の後の空気はひどくけだるい。さんざん汗をかいた俺たちは少し離れて寝そべっている。締め切ったカーテンを通して、
申し訳程度にやわらげられた真夏の日差しが洩れている。風が吹いてカーテンがゆらぐと、仰向けになったシンジの顔に陽が当たる。
シンジはまぶしそうに顔をしかめて俺の方を向く。
終わると、どんなにもみくちゃにされた後でも、シンジは俺から目を離そうとしない。
いくら疲れていても、眠そうなとろんとした目をじっと俺に向けている。俺より先に眠るのが厭だから、俺が眠るのを待っているらしい。理由は知らない。
「学校は?」俺は顔だけそっちに向けて訊く。
「・・・もう、どうでもいい、あんなとこ」シンジは厭そうな顔をする。
「だからって、真っ昼間からこんなことしてて、いいのか?」俺は薄く張った氷の上を歩くような気分で訊く。
あまり不用意な言い方をすると、すぐにシンジを傷つけてしまう。案の定というべきか、シンジは軽く目を見開いて身体を丸めた。
でも最近は俺の言葉を切り返してくるようにもなった。
「・・・そんなこと言うと、エヴァのパイロットなんかやめて、先生のところに帰っちゃうよ」
上気した顔が俺をまっすぐのぞきこんでくる。
「そしたら、追っかけていくさ」俺は軽い調子で言う。シンジはちょっとためらってから、嬉しそうに笑って俺の方に手を伸ばしてくる。
身体のどこに触れても全身を震わせるほど繊細な癖に、触れてくるのはいつもシンジの方だ。
しばらくシンジの好きにさせておいてから、いきなり抱きすくめる。シンジは声を洩らして俺にしがみついてくる。密着した身体はまだ熱い。
「・・・LCLに融けるって、こんな感じ?」
「うん」シンジは消えそうな声で言う。それから少し考え、つけたした。
「でも、僕はこっちの方がいいや。ずっと」「そっか」「うん」
どうでもいい会話を交わしているうちに、結局いつもシンジは先に寝入ってしまう。俺は耳をシンジの
頭にくっつけて、その安らかな、でもどこか不安そうな寝息をいつまでも聴いている。
マターリマターリ。・・・こんなのを望む俺は逝ってよしですか?