02/08/21 11:32
「も……駄目ぇッ…!」
泪がぱらぱらっと飛び散って、眉根はせつなげに寄せられて、そしてシンジはとうとう到達した。
俺も達きそうになったが、しかしギリギリの所で理性を保って、シンジから身を引きぬいた。今日は、避妊具をつけていなかったのだ。
勿論俺もシンジも病気なんか持ってないが、だが万が一のことが在ったら……ああ、今はそんなことはどうでもいい。どうでもいいんだ。
「おにぃ……さん……」
シンジはへなへなと、力尽きてその場に座りこんでしまった。俺も座った。地面にそのまま座っているやつらは嫌いだが、今は真似させて貰う。
汗ばんでしっとり濡れたシンジの髪に指を入れて梳いてやると、シンジが照れくさそうにこちらに寄ってきた。
しかし、俺に本当にぴったりくっ付く訳ではなかった。お前はいつもそうだ。
「もっと……寄れよ、近くに」「え…でも」
もどかしく感じて、俺は自分でシンジを抱き寄せた。シンジは恥ずかしそうに俯き、しかし腕の中で寄り添ってきた。
……これがお前の愛情表現。臆病で不器用で、拙くてはにかみ過ぎで、お前らしくてとても愛しい。
「……愛してるから」
俺の場合は、こんな陳腐な言葉でしか伝えられない。もどかしすぎる。
こうしている間にも、刻一刻と、シンジとの別れの時間が迫っていると言うのに。
シンジがポツリと呟いた。
「慰めてくれて……有難うございました。人に抱き締めてもらうと、凄く安心できるって……判ってても誰も抱き締めて……くれないから」
最後は消え入るような声。更にシンジは語調を少し変えて、繋いだ。
「おにいさん。有難う。誰かにこうしてもらいたかったんだと思う。これでもう……逃げません。きっと頑張れる」
何度そう言って、そしてまた傷付いて挫折したのだろう。この憐れな少年は。そして俺以外でも、本当はよかったんだ。彼は。
でもそうは言わなかった。
「明日のシンクロテストまでは時間がある。俺の部屋に戻って、もう一度しよう」
そう言うとシンジは目を丸くしたが、やがて微かに首を縦に振った。
俺はシンジを抱く腕に力をこめた。