08/07/02 23:45:27 C7XoIOIR0
751:休息 ◆deggScNisI
08/07/02 23:46:50 925gIWAZ0
浴場の入り口は二つあったが、なんとなく青いのれんが掛けられた方を選ぶ。
片腕だけで器用に衣服を脱ぎ去り、棚の中に置いてある篭へと放り込んでいく。
ガラガラとガラスの戸を開けると青い空が見えた。露天風呂、という奴だろうか。
ヒンヤリとした石の感触を素足に感じ、ガドルはキョロキョロと辺りを見渡し、目当ての物を見つける。
こういう所ではまず身体を清めるもの、と記憶している。この状況で気にする必要があるかどうかは別として。
流し場にいくつか置いてある木製の椅子に腰を下ろし、目の前の加賀美を見つめる。
自然と鍛えられ、盛り上がった筋肉が外気に震えている。
左肘から先は欠損し、注意深く見ればそこかしこに小さな傷もできている。
ガドルは左肩にできた切り傷にそっと触れてみる。自身の治癒能力はある程度制限されてはいるが、健在のようだ。
時間さえ掛ければ、あるいは左腕を接合する事も可能かもしれない、そんな事を考えつつ蛇口を捻り、桶にお湯を溜める。
お湯に浸したタオルに石鹸を滲み込ませ、なるべく傷口には触れないようにしながら身体にこすり付けていく。
今度は別の蛇口を捻る。シャワーから勢いよくお湯が飛び出し、身体に纏わりついた汚れや垢を泡と一緒に流していく。
そのまま頭を濡らし…手が止まる。目の前には二つボトルがあり、恐らくどちらかがシャンプーと呼ばれる物なのだろう。
だがもう一つは?仮に間違えた所で何の問題も無いとは思うが…ガドルは悩んだ末に両方とも使い、髪を泡立て、洗い流していく。
身体を清め終わったガドルは立ち上がり、風呂へと向かう。確かに身体を清めるのは悪くはない、が―
752:休息 ◆deggScNisI
08/07/02 23:47:33 925gIWAZ0
(分からん、何故単なるお湯に身体を浸ける事をリント達は好むのだろうか?)
右足をゆっくりとお湯へと浸ける。多少熱く感じるが、我慢できないほどではない。
そのまま左足。しばらくそうして仁王立ちをしていると、少しずつだが身体に熱がこもってくる。
そのまま腰を下ろし、風呂の中の段差に座り込む。下半身は完全に浸かりきった形だ。
(なるほど…確かに、悪くはないな)
多少傷口に沁みるが、緊張が解される感覚が心地よい。左手の負傷が無ければ全身を浸からせていた所だろう。
しかしこの心地よさ。もしも全身を浸からせていたらあまりの心地よさに眠ってしまうのではないだろうか。
「おぉ~……」
思わず声を漏らし、ガドルは初めての温泉を堪能した。
753:名無しより愛をこめて
08/07/02 23:47:58 C7XoIOIR0
754:休息 ◆deggScNisI
08/07/02 23:48:19 925gIWAZ0
少々長湯しすぎたようで、ガドルは多少のぼせてしまっていた。
もやもやとする頭で浴場を抜け、身体を乾いたタオルで拭いていく。
(風呂とは心地よいが、危険だな…)
そう心に刻み込みつつ、浴衣に着替え、二階の部屋へとふらふらとした足取りで戻っていく。
部屋にたどり着き、扉を閉めた所でついに限界を向かえ、バタリと倒れこんでしまう。
這いずるようにバッグの側まで近づき、左腕とカードデッキを取り出し、カードデッキは懐に仕舞い込む。
これで突然の襲撃にも備えられるだろう。そして左腕は傷口とピタリと合う所で固定させる。
治癒能力が健在ならば、こうしておけば目覚めたときには接合されているかもしれない。そう上手くいくとは思えない、が…
ともかく、今の状況でやれる事はやった。ガドルはそう判断し、身体を休めるため、ゆっくりと目を閉じた。
755:名無しより愛をこめて
08/07/02 23:48:41 0Yexi+M7P
756:休息 ◆deggScNisI
08/07/02 23:48:58 925gIWAZ0
【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:C-3保養所二階】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:左腕の肘から先を破損。右足部装甲破損。全身の負傷中。ぽかぽか。睡眠中。
[装備]:オルタナティブゼロのデッキ、基本支給品×1、首輪探知携帯、YAMAHAのT MAX
[道具]:破損した左腕
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。
※バイク(YAMAHAのT MAX)は保養所の裏手に隠されています。
757:名無しより愛をこめて
08/07/02 23:49:14 C7XoIOIR0
758: ◆deggScNisI
08/07/02 23:49:52 925gIWAZ0
投下終了です…誤字脱字、矛盾点等のご指摘よろしくお願いします。
支援してくださった方々、ありがとうございました
759:名無しより愛をこめて
08/07/02 23:51:40 C7XoIOIR0
>>751
投下乙
まずは指摘から。
>>751で、加賀美とありますが、鏡の間違いでしょうか?
あと、左腕はゼロノス戦でなく、ダブルライダー戦で失われています。
それはさておき、男のサービスシーンww
ガドルの風呂シーンの力の入れように吹きました。
描写も細かいw
GJ!
760:名無しより愛をこめて
08/07/02 23:59:17 4x1ougxS0
投下乙!
こう、何というか男男しい風呂と言うのもいいものだなw
それはそれとしてもガドルかっこいい。この掘り下げをいかした今後の活躍にきたいだぜ。
761:名無しより愛をこめて
08/07/03 00:02:17 CpVTKOgx0
投下乙です。
気になった点が一つ。
以前の話で、首輪探知機能の適用範囲は500mという記述がありましたが
病院周辺の参加者の首輪を感知するのなら500mでは足りないのではないかと思われます。
(一度病院の近くまで行った、という文があれば良いかも)
そして感想ですが、
ガドルさん初めての温泉www和んでる姿を想像して吹いたw
書き出しのカッコよさとのギャップがまたたまらない!
素晴らしいサービスシーンでした、GJです!
762: ◆deggScNisI
08/07/03 00:10:41 FOcrvpSw0
書き込めるかな…?
ご指摘ありがとうございます!一時投下スレの方に修正稿上げておきました。
鏡はともかく…左腕と探知機範囲の勘違いは本当に申し訳ないです…
763:名無しより愛をこめて
08/07/03 00:17:17 gULsFanZP
サービスシーンキターw
和みシーンのくせにやけに風格があるのは流石ガドル閣下。
でも傷がひどくならないかな……グロンギだから大丈夫か。
この先の動きに要注目ですね。乙でした。
764:名無しより愛をこめて
08/07/03 00:32:06 +Q/PudASO
投下乙です!
ガドルのかっこいい入浴シーンktkrww
今はただ休息を取ることにしましたが、この後大暴れなるか!?
面白かったです!GJ!
しかしヒビキさんに続きガドルまで……
ライダーNEXTが男のサービスシーンに定評のあるロワになるのも時間の問題だな!
765:名無しより愛をこめて
08/07/03 00:44:19 PStEx0vW0
>男のサービスシーンに定評のあるロワ
勘弁してくれよwwww
次のサービス要員は牙王辺りか?
766:名無しより愛をこめて
08/07/03 03:02:22 uSzeVoMkO
GJです。マターリ癒されました
767:名無しより愛をこめて
08/07/03 07:34:40 khA7mp8O0
さあさあ早く謝罪しろよ。
結局自演ではないと証明されたんだからよ。
ライダーロワの削除依頼でも手土産にして謝りに来いよ!
768:名無しより愛をこめて
08/07/03 09:06:54 tCVwbdrHO
他スレに迷惑かけといて
普通に作品投下できるなんて素晴らしい企画ですね
769:名無しより愛をこめて
08/07/03 10:05:06 +wRmnsEs0
指摘です。
>>741
×(バダーが気に入るもの頷ける…)
○(バダーが気に入るのも頷ける…)
埋められていたのは一条さん…だったか。
なんという因縁。
なんだかガドルのキャラが日々進化している気がします
770:名無しより愛をこめて
08/07/03 10:45:13 F1il8DaBO
>>768
それはあの書き手が現れた時に言うべきだな
771:名無しより愛をこめて
08/07/03 13:15:51 FF8WqjlV0
>>758
投下乙です。
なんで、じっくりお風呂を堪能してるんだwガドルwww
放送や一条さんの亡骸を見て感慨深げなガドルがかっこよかったです。
サービスシーン楽しませていただきましたw
GJです。
772:クラインスレ書き手 ◆kMr1QQsLJM
08/07/03 13:21:22 IFYe5vYE0
初めまして。クラインスレに作品を投下していた書き手です。
クラインスレの荒らしがこちらのスレにまでご迷惑をおかけしたようで申し訳ありませんでした。
私のトリップが簡単だったこと、暫くクラインスレから離れていたことが原因です。
もしこれ以上クラインスレの荒らしと同一IDからこちらのスレを荒らす書き込みがあるようならば私が責任をもって通報します。
なので、どうか◆cW9wr8uD4A氏は引き続きこちらのスレに参加することをお許しください。
長文になりましたがどうかよろしくお願いします。
この度はご迷惑をおかけし、大変失礼いたしました。
773: ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:00:59 AW3Yt2P/0
加賀美新、風見志郎投下します。
774:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:03:02 Vrix5ZAL0
775:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:04:25 AW3Yt2P/0
「お前……風間だろ?」
知りもしない男から掛けられた言葉。
風見志郎は、この男が自分を何者かと勘違いしているとすぐに分かった。
よほど自分に似た知り合いがこの男にはいるのだろうか。
風見は、男が近寄ってくるのを無視するように男とは逆方向へ歩き出す。
「俺は風間なんて名前じゃない。人違いだな…」
あくまで否定したつもりだった。だが、男はそれをそのままに受け取ろうとはしない。
「風間!!お前、なんでそんな事言うんだよ?俺たち、一緒に戦ったこともある仲じゃないか。」
風見は、この男が馬鹿なのではないかと思った。
こちらが否定しているのに、あくまで風間という男だと思い近づいてくる。
本来ならば、ここで倒すべき相手だが…
(今は、変身したばかりだ。こいつに付き合ってやるのも時間潰しにはなるか。)
「……そうだった……な。」
あくまで、風間になり切ろうとは思わなかった。だが、1人で今はいるよりも
2人でいた方が助かる可能性は高い。今はまだ戦いの後の傷が深いのだから。
ならば、何者かを盾にする事も考えなければならない。
愛する妹を救う為には、方法など選んでいられない。
今はまだ、死ぬわけにはいかないのだから。
776:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:04:58 AW3Yt2P/0
男は、自分の返した言葉に小さく笑みを浮かべると、肩に手を置き馴れ馴れしくしてきた。
どうやら、本当に単純な男らしい。
「お前、水臭いじゃないか。どうして他人の振りなんかしたんだ?
なんかワケがあるなら話を聞くからさ。
天道が死んで……デネブまで。俺、こんな争いは止めたんだ。」
風間という男が、この男と友好関係にあるのは間違いなさそうだ。
ならば、風間の振りをしてこの男から必要な情報を聞き出すのも悪くはない。
「君は、戦うつもりはないんだな?俺は、戦うつもりだ……自分の為に。
あの子の為にも…」
単純な男、加賀美新は風間の振りをした風見の決意を聞いて深く溜息をついた。
よほど、自分の反応がショックだったようだ。
「あの子……って。お前、まさかゴンの為に?
ゴンの為に、お前は戦うっていうのか?」
どうやら、この男は自分の語ったあの子が「ちはる」ではなく
「ゴン」だと思っているらしい。
自分が不意に口にしか言葉が、相手を勘違いさせてしまったようだ。
「ゴン……だと?それはいったい……」
否定しようとすると、加賀美は風見の肩から手を離していく。
「俺は、それでもお前は戦うつもりはない。絶対に、この戦いを止めてみせる!!
天道や、デネブの分まで……俺が”ライダー”として戦う。
奪う為じゃない、守る為に俺は戦いたいんだ……」
777:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:05:49 AW3Yt2P/0
風見は、加賀美の言葉に一時も自分の意思が揺るぐことなどなかった。
今の自分には、愛する妹のことしかない。
ライダーとか、正義だとか。そんな事からは今は何も感じられない。
「君には、何も分からないだろう。愛する者を失った悲しみや、絶望などは…」
自分には、もはや妹を取り戻す道しか見えない。
この男に、その悲しみや苦しみなど分かるはずもない。
だが、男が返した言葉は意外なものだった。
「……分かるさ。俺にだって。」
□
加賀美の脳裏に浮かび上がる情景。愛する者を失った、あの日のことを。
―「俺を消したり、しないよね?兄ちゃんは、挫折した俺にとってたった1つの自慢なんだ」―
あの日、自分は何も出来なかった。ただ、弟を殺し擬態したワームを呆然と見つめるしかなかった。
あの時、あいつがいなければ今の自分はいない。
天の道を往き総てを司る男の言葉が無かったら、今の自分はいなかった。
778:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:05:56 Vrix5ZAL0
779:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:06:19 AW3Yt2P/0
―「おばあちゃんは言っていた。人は人を愛すると弱くなる。 けど恥ずかしがることはない。」―
天道のあの時の言葉、総てを今でも鮮明に覚えている。
―「それは本当の弱さじゃないから。 弱さを知っている人間だけが、本当に強くなれるんだ…!!」―
自分は弱かった。弟の姿をしたワームを撃つ事も出来ず、ただカブトが倒すことを願うしかなかった。
―「天道!!いつか…俺は、お前を越えてみせる!!」―
そういった自分に、天道が投げ返したボール。
あの時の天道の笑みが、今でも忘れられない。
□
あの時の言葉、「いつか天道を越える」。
天道総司という自分にとって大きな存在だった男は、もういない。
あれほどに、尊大で強かった男がいない事が今でも信じられない。
だが、それでも加賀美には天道の思いが受け継がれていた。
780:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:06:42 0I84/nBV0
781:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:06:57 AW3Yt2P/0
「俺にだって、分かるさ。弟を、亮を…失った俺には。
だけど、俺にとっての亮はあの約束をした日に……死んだんだ。
失ったことは辛いさ。デネブも……天道まで。
悲しいからそれに折れそうになる。だけど、その弱さがあるから…」
妹を取り戻そうとする風見。一方で弟の死を受け入れ戦おうとする加賀美。
妹の為に、生きようとする風見にとってそれは単なる奇麗事にしか聞こえなかった。
「そんな事は、奇麗事だ!!俺には、俺にとってはあの子が総てなんだ。
お前に、それが分かるわけがない……!!」
加賀美は、その言葉を聞いても目を逸らそうとしない。
「でも、弱さがあるから俺は強くなれたんだ。
俺たち人間は、一度しか命が無い。だから、俺もお前も一生懸命生きてるんじゃないか?俺は、お前が戦うっていうんならそれを全力で止めてみせる……絶対に。」
2人はただ、見つめ合う。お互いに譲れない意志。
どちらが正しいというべきではない。どちらもまた、正しいのだ。
ただ1つ、言える事があるのなら”未来”の風見志郎もまた加賀美が望んだように、自らの手で「愛する者を解放する」道を選んだことだけだろう。
だが、自らが為した未来の選択の事を今の風見志郎は知る由もなかった。
782:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:07:22 0I84/nBV0
783:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:07:56 gULsFanZP
784:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:08:26 Vrix5ZAL0
785:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:08:47 0I84/nBV0
786:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:09:14 Vrix5ZAL0
787:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:10:25 AW3Yt2P/0
□
「風間…どうしても、戦うっていうんだな。」
分かれ道に立ち、2人の男が言葉を交わす。
「あぁ……私は、戦う。それが私にとっての…ライダーとしての生き方だ。
いずれはお前も倒す。その時は、受けて立って貰おうか。
その時が来るまでは、君との決闘は預けておこう。」
自分は仮面ライダーなどではない。ただの改造人間。
ショッカーに改造され、今は妹を救うという崇高な願いを抱いて戦っている。
決して揺るがない思いが、言葉となって出ただけだった。
背を向けた風見へ向け加賀美が声の限りに、叫びながら追う。
「風間!!それでも俺は……お前と戦うなんて出来ない!!」
風見はその言葉を聞いても、振り返ろうとしない。
あくまで、彼は修羅の道へ進むのだろうか?
風見志郎は何も語らない。ただ、追ってくる加賀美の姿を後ろ目で追うだけだ。
情報を得る為に、今はこの男を利用する。
風見志郎には、その考えしか今は無かった。
788:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:11:18 Vrix5ZAL0
789:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:11:23 0I84/nBV0
790:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:11:45 AW3Yt2P/0
加賀美と共に歩く風見志郎は、葛藤していた。
自分の願いと、妹への思いとの狭間で。
だが、彼に戦いを止める選択肢は無い。
彼にとって、今は愛する者が世界の全てなのだから。
それでもまだ、彼の心に残る「ライダー」という言葉。
それが何を意味するのか。今は誰にも分からない。
ただ1つその先に見えるもの、2人の行末を見守るように空に見える太陽。
その太陽は、親友の姿を見守るように輝いていた。
【風見志郎@仮面ライダーTHE NEXT】
【1日目 午前】
【現在地:D-9 駅のホームから加賀美と共に移動】
【時間軸:】THE NEXT中盤・CHIHARU失踪の真実を知った直後
【状態】: 疲労回復、全身打撲、大。両腕、腹部にダメージ大。V3、キックホッパーに1時間変身不可
【装備】:ジャングラー 、ホッパーゼクター+ゼクトバックルB、デンガッシャー
【道具】:不明支給品(未確認)0~3。基本支給品×2セット、ピンクの腕時計、FOX-7+起爆装置(残り4)
【思考・状況】
1:殺し合いに勝ち残り、優勝してちはるに普通の生を送らせる。
2:ショッカーに対する忠誠心への揺らぎ。
3:葦原涼が死んでいなかったことに驚きと僅かな安堵。
4:加賀美新と行動。利用できる情報を得たい。
5:いずれこの男(加賀美)と決着を付ける。
【備考】
※モモタロスの死を受け止め、何か複雑な心境です。
※ホッパーゼクターを扱えます。
※FOX-7は基本的に、起爆装置を使った時にのみ爆発します。爆発の規模は使った量に比例します。
起爆装置は全携帯が内蔵している専用アプリに起爆装置のコードを打ち込んで操作するもの。
スイッチ式と時限式の両方の使い方ができます。
791:果てなき願い ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:12:11 AW3Yt2P/0
【加賀美新@仮面ライダーカブト】
【1日目 午前】
【現在地:D-9 駅のホームから風見と共に移動】
[時間軸]:34話終了後辺り
[状態]:激しい疲労と痛み。脇腹に刺し傷。頭部に打撲、肩に裂傷。
強い怒りと悲しみ。
[装備]:ガタックゼクター、ライダーベルト(ガタック)
[道具]:基本支給品一式 ラウズカード(ダイヤQ、クラブ6、ハート6)不明支給品(確認済み)2個。
[思考・状況]
1:風間大介(実際には風見志郎)を連れ、他の仲間、特に桜井侑斗と合流する。
2:危険人物である澤田と真魚(名前は知りません)を倒す。
3:風間(風見)といずれは戦うことへの迷い。出来れば戦いたくない。
[備考]
※デネブが森林内で勝手に集めた食材がデイパックに入っています。新鮮です。
※首輪の制限について知りません。
※友好的であろう人物と要注意人物について、以下の見解と対策を立てています
味方:桜井侑斗(優先的に合流)
友好的:風間大介、影山瞬、モモタロス、ハナ(可能な限り速やかに合流)
要注意:牙王、澤田、真魚(警戒)
※風間大介(実際には風見志郎)が戦いに乗っていることを知りました。
(風見、加賀美の移動先は次の書き手の方にお任せします)
792: ◆aj6Zn5J.vQ
08/07/03 21:12:54 AW3Yt2P/0
投下終了です。支援感謝します。ありがとうございました。
793:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:16:52 Vrix5ZAL0
投下乙
加賀美の決意が熱い。
風見とぶつかり合う日が楽しみです。
心理描写が巧みで、加賀美や風見が輝いていました。
GJ!
794:名無しより愛をこめて
08/07/03 21:30:51 0I84/nBV0
投下乙です。
加賀美と風見が対比していて良かったです。
加賀美この様子だと気付きそうにないなw
歪だけどどこか似ている二人のやり取り、GJです。
795:名無しより愛をこめて
08/07/03 23:40:58 zQLM3Dk30
投下乙です!
加賀美のまっすぐな思いが眩しい…!
今は利用するために動向している風見がどう影響されるのか、
はたまた激しいぶつかり合いに発展するのか。
肉親を失ったという共通点のある二人の出会いがこれからどうなるのか
とても楽しみです!GJ!
796:名無しより愛をこめて
08/07/03 23:56:20 epwDwZRp0
投下乙です。
加賀美は熱血属性全開ですね。
そして少しずつ外堀を埋められて行く風見社長の動きが気になります。
本物のドレイクと出会ったらどうなるんだろう……。
ところで、これまで議論スレの方に書き込めなかった方を中心にお願いなのですが、
よろしければこちらのスレに書き込んでみていただけないでしょうか。
URLリンク(riders.sphere.sc)
機能的にも充実しているので、携帯書き込みの問題を解決できるようであれば
ログを全部こちらに移してしまいたいと思っています。
797:名無しより愛をこめて
08/07/04 01:10:58 yhMkyldqO
投下乙!
加賀見……相変わらず熱い奴だ!w
風見の事に気づくのがいつ来るかも気になりますね。
しかし気づいていないのもまた加賀見らしいというかなんというかw
>>796
お疲れ様でした。
今まで書き込めなかった者ですが無事書き込めたのご報告です。
798:名無しより愛をこめて
08/07/04 01:26:21 rxxiPHsu0
>>797
確認ありがとうございます。
ようやくこの問題がクリア出来たか……。
というわけでログを移動しました。以前の避難所は読み取りのみに変更しました。
URLリンク(riders.sphere.sc)
今回は同じ板で任意ID・強制ID・ホスト表示のスレを共存させられるので、
議論スレも同じ板においています。
不都合などありましたら、こちらなり避難所なりでご報告頂ければできるかぎり善処します。
また、まとめwikiの新スレテンプレもすべて新しいURLに変更ずみです。
念のため、議論スレと雑談スレの新URLを挙げておきます。
議論スレ
URLリンク(riders.sphere.sc)
雑談スレ
URLリンク(riders.sphere.sc)
799:名無しより愛をこめて
08/07/04 01:46:17 VVO7bGWvO
>>798
設置&移行乙です!
お世話になります。
800: ◆N4mOHcAfck
08/07/04 12:35:23 iM1p6unlO
帰宅時間が期限に間に合わないので、申し訳ありませんが延長をさせてください。
801:名無しより愛をこめて
08/07/04 13:22:25 9uLEdcqn0
>>800
執筆乙です!了解いたしました、お待ちしております!
802:名無しより愛をこめて
08/07/04 17:00:41 hXYEAA/pO
他スレに迷惑かけたロワ初めてじゃね?
803:名無しより愛をこめて
08/07/04 18:06:08 8GZucGYA0
>>802
ここはやはり責任をとってロワを中止すべきだな
804:名無しより愛をこめて
08/07/04 20:25:01 PJZ4+OIr0
なんとわかりやすい自演コンボ
805:名無しより愛をこめて
08/07/04 20:34:51 hXYEAA/pO
自演と思いたい気持ちはわかるが残念違う
荒らしが複数いることから目を背けるな愚図ども
806:名無しより愛をこめて
08/07/04 20:43:23 iLYXdi8d0
兎に角、キレートを中止すべきだなをとってロワを作る。
平成終わったら私はやはり責任がまだまだ続くだろ。
この値のを最も確からしい。
807:名無しより愛をこめて
08/07/04 21:58:57 AOD7o9DB0
日本語でおk
808: ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:04:05 idiMBVUd0
これより投下します。
809:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:05:23 idiMBVUd0
何故疲労を隠そうとも、癒そうともしていないのか。尋ねる術は無いが、興味をそそる行動ではあった。
此処がリゾートの都市部であることを踏まえると、住宅街の一軒一軒がどの様な存在によって築かれたのかという事実を認識するのに多くの時間を必要とはしない。
それを理解したところで、人影―海堂には何の意味も無いのだが。
奇妙な程整ったその住宅配置は、主催者の威容を存分に見せ付け、参加者である自身との格の違いを海堂にまざまざと思い知らせるだけなのだから。
理解したところで今更止まる彼では無いし、逆に発達した主催者、スマートブレインへの憎悪という名の猛毒が海堂を蝕んでいくだけ。
ならば今は気にしない方が良いに決まっている。出来ることを一つ一つしていくことで、スマートブレインに対抗していく。これまでだって仲間達とそうやって来たのだから。
故に、走り続ける。今出来ること―スマートブレインの言うがままに殺し合いに乗り、仲間を、罪の無い参加者達を傷付けている外道「仮面ライダー」の打倒を達成する為に。
そう、「仮面ライダー」。この場所へ連れて来られる前の村上の話を海堂は思い出す。
仮面ライダーについて知っていて当然とも言うべきあの口振り。まるで身近に存在しているかの様な口調。
自分達オルフェノクは仮面ライダーでも何でもない。「それ以外の人智を越えた存在」の方だろう。
では、仮面ライダーとは何か? 一人の戦士が海堂の脳にフラッシュバックし、薄暗い疑問に一筋の光明をもたらした。
―ファイズ。以前海堂も変身したことがある。アマゾンがモグラを殺した時の様に、裏切り者のオルフェノクと戦った。
しかしながらファイズに現在変身している乾巧は参加者名簿に名前が無かった。
それどころかその乾の仲間もいない。「仮面ライダーとそのお仲間の皆さん」と発言していたくせに。
やはりファイズは仮面ライダーではないのか。そう思ったところでもう一つのベルト、カイザの存在を思い出す。
810:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:05:59 idiMBVUd0
あれとは既に一度戦っている……と思考したところで、ようやく海堂はこの地でカイザに変身していたのが以前乾巧に同行していたのと違う人物であったことに気付く。
顔を必死に思い浮かべる。少しずつ記憶を引き出し、それが木場を狙ってきたスマートブレインのオルフェノクだったと気付く。
一つの答えを自分なりに組み上げた海堂。「スマートブレインの刺客が仮面ライダーに変身している」。
おそらくはファイズギアも再びスマートブレインに奪還され、刺客が使用しているのだろう、と。
多々の矛盾が存在することは間違いないのだが、仮面ライダーを打倒する大義名分を生み出した時点で思考は閉じ終えられていた。
海堂の走行速度が再び上昇する。スマートブレインの刺客がライダーだとすれば、仲間達が危ないと踏んだのだ。
モグラ獣人という新たに得たばかりの仲間を失った今、これ以上大切な存在を失う訳にはいかない。
木場、長田。同じ苦しみを味わってきた仲間達。
彼らにもまた自身にとってのモグラの様な存在がいて、それを奪われたら?
こんな場所でまで同じ苦しみを味わせはしない。必ず非道なライダー、怪人、スマートブレインの手から守り抜く。
たった一人の決意表明。この広いフィールドでそれを実践できるのか。不安は拭えないが、怒りが絶えることはない。
811:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:06:53 idiMBVUd0
◆
木場勇治に休む時間は無い。いや、彼が休みたがらない……というのが正しいか。
動くことで、心の奥底へ寄生せんとする不安、憎悪、恐怖などの存在を押さえ付けられるならば。理想を手繰り寄せることができるのならば。
―動かないよりは、ずっと良い。
海岸線沿いに通っている都市南部の道路には、浜風が直に吹き付ける。
やがてそれが島の北へ向けて吹き抜けていくことを思うと、木場は声に出すこと無く尋ねていた。
「仲間達は無事ですか」――と。
それはこの島にいる海堂や長田のことであり、彼を裏切った影山のことでもある。
更に言えば、この会場の外にいるファイズギア正装着者のことでもあった。
今、木場が所有しているのはファイズギアのみ。支給品の携帯をまだ持っていたなら、放送で会場内の仲間の安否を知れた筈。
ファイズギアが自分の下ではなく、「彼」のところに戻っていたなら―彼の無事を確信することもできた。
支給品の紛失とギアの所持という二点から、会場内外の「仲間達」の安否を確かめることも、無事だという確信を持つこともできないのが歯痒い。
故に、最優先事項はそれを把握することに外ならない。もっともそこに存在する動機は、マイナス思考から来るものではあるのだが。
どうしても「無事であることを一刻も早く知りたい」という思いより、「悲報を知るなら早い内に」という思考が先行してしまうのだ。
もちろん木場が彼らに望んでいるのは「生存」の二文字。ただ、自身が酷い目にあってきた以上、彼らもまた同じ目に会っているのではないか、と考えるのは至極当然だった。
不安の肥大化に合わせる様に吹き付けた疾風が、木場の目を細めさせる。
太陽が辺りの暗さを払拭することはあっても、心の闇を浄化することはない。
むしろ陽光の中に佇む闇は、漆黒の中で蠢いていた時のそれよりも存在感を増している。
812:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:06:56 qR5mkUzj0
813:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:07:34 idiMBVUd0
道を踏み外すつもりはないという意思通り、舗装路を道なりにひたすら進む。
大きく口を開きながらも、満足に呼吸ができていない事実が辛い。
海を臨む海岸沿いに、狭苦しさも何もある筈ではないのに。
気を紛らわせる為に一歩毎に重ねる葛藤が、心への暗黒の侵略に対する仮初めの防壁にはなってくれている。
これまでと同レベルの苦難が姿を変えた闇ならば、おそらくは防いでくれるだろう。
問題は、それを上回る悪夢を見た時。例えば―
―これまでを上回る人間の汚さを目の当たりにした時。
―何かを喪失した時。
それらを媒介して闇が誕生したならば、易々と防壁は破られ、おそらく心は侵食される。
理解していてもその未来を切り捨てられない自身を木場は憎む。
枷となっていた闇はこれまで抗ってきた努力を認めるべく、己が木場の真なる原動力となるのを心待ちにしている。
その局面まで辿り着いた時初めて、木場は自分にとある権利が与えられているということに気付くのだろう。
全てのオルフェノクに等しく与えられた、その権利に。
814:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:08:30 idiMBVUd0
◆
海堂がショッピングセンターへと辿り着いたのに深い意味は無い。
ただ道なりに駆け抜けて、たまたま目についたから足を踏み入れただけなのだ。
敢えて理由というものを添えるのであれば、病院や放送局といったものと同列の扱いでわざわざ地図に表記されており、誰かしらの参加者とは接触できるのではないか、と思考した為であろう。
自動ドアをくぐり、文字通り「入店」する。
明かりが付いていないということは、やはり無人なのだろう。ご丁寧にドアを開けてくれたのは助かったが。
もしモグラが隣にいたなら、どんな反応をするのだろうか。
時は戻らないというのに、そんなことを考える自分を海堂は激しく嫌悪する。
それでも店内を散策していく内に、少しずつ冷静になっていく自分に海堂は安堵する。
小奇麗に並べられた売り物。清潔感漂う壁、柱、床。精神の安定には丁度良かった。
ただその一方で不安が生まれる。出口へ近づくに連れて、辺りに荒れが目立ち始めたのだ。
しかし気配は無い。ならば原因は――
一つの疑問は、確信へと姿を変えた。
「……こいつぁ…………!!」
海堂は言葉を失う。視界の片隅で沈黙する、砂混じりの灰が原因である。傍らに眠る鉢植えの存在が、妙に痛々しく感じる。
それが自分と同じ、同じ参加者の遺したものだと脳が判断するまで、長くはかからなかった。
床に無造作に散らばった物品や陳列棚、それらの破片は整理されたまま無人となったであろう店内の光景ではなく、明らかに戦闘が行われたことを示す痕。
そして山と盛られた灰は、その戦いの勝敗が決定済ということを意味していた。
辺りにはデイパックも、首輪も無い。持ち去られた、ということなのだと海堂は結論づける。更にそれを行った存在、戦闘の勝者が何者であるかも、同時に。
息が荒くなる。肩が上下に大きく揺れ、焦点がブレていく。視界の灰が歪み、一つの映像を繰り返し再生し続ける。
数時間前に体験した、二度と味わいたくない耐え難き悪夢。
ショッピングセンター内の静寂を背に、身体中が小刻みに震える。
握りしめられた拳は、怒りをぶつける対象が存在しないことを嘆き、空を切ることすら許さない主の心情を察している。
815:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:09:20 kMEKgW9QO
支援
816:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:09:21 idiMBVUd0
震えが収まると同時に、海堂がその場に崩れ落ちる。同時に両膝を、次いで両手が床に密着。
ひんやりとした感触がそれらを襲うが、心まで冷やすことはない。むしろ、焼け石に水といったところだろうか。
「ちくしょう……モグラ……モグラァ……」
灰に降り積もる憎悪と悲哀の結晶は、容赦なく残ったそれを崩していく。
それでも膨れ上がる怒り。憎しみ。感情と肉体の離別を感じながらも、それを止める為に、ゆっくりと、確実に、右膝を持ち上げる。
続けざまに持ち上げる左膝。じっくりと、確実に、心を落ち着かせて。
ようやく左足が持ち上がり、二つの足裏が床を踏み締める。この感情を何処に向ければ良いのか。
その思考が答えを見つけだすより早く、床に転がった陶器の破片を砕く足音が静寂を破った。
「残念だなぁ……僕も、混ざりたかったのに」
余裕を痛い程に、憎たらしい程に感じさせる軽い足取りで、荒れたフロアを縫う様にして。北崎という名の少年は海堂の視界に入り込み、笑顔を見せた。
「てめぇ…………」
反射的に海堂は北崎を睨み据える。混ざりたかった? こいつは狂っている。間違いなく。
解かれた拳を一瞬で再度握りしめ、歩み寄る存在に視線を固定する。
817:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:09:30 qR5mkUzj0
818:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:10:46 qR5mkUzj0
819:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:10:53 idiMBVUd0
「そんな怖い顔をしないでよ。……どうなの……そこで灰になってる奴は強かったのかい?」
「何を言ってやがる…………」
強かった? 答えられる筈がない。海堂がこの場を訪れた際、既に謎の参加者は灰と化していたのだから。
なら何故そんなことを聞く? 理由は唯一つだろう。北崎は海堂が参加者を手に掛けたのだと判断したのだ。
「そうなんだ……思い出すのも嫌なくらい、強かったんだね。もっと早くここに来れば良かったよ」
「……………………」
周辺の荒れ具合。北崎はそこから激戦を想像する。かなりの兵が関与していたのだろう、と。
事実その推測は正しい。既に灰と化したその存在ならば、間違いなく北崎を喜ばせることができた筈だった。……もちろん海堂の知る所では無いが。
しかし海堂は誤解を解こうとはしない。このままだと自分が何をするか分からない。感情を押さえ付けるので精一杯だ。
「でも……そんなに強かったなら、それに勝った君はもっと強い……そうだよね?」
北崎は笑顔のままポケットに手をねじ込み、長方形を取り出す。そしてそれを銀の天井に向けて放り投げた。
ただ呆然とその軌跡を見つめながら、海堂はその正体を知ろうと目を凝らす。
深緑が視覚に焼き付き、床に転がる無機質な音を聴覚が捉え、触覚がその硬さを認識した。
「ちょっと君の力を試させてよ……それ、使っていいからさ」
金で形作られた猛牛の紋章と、海堂の視線が一つになる。
北崎に飽きられた「玩具」。ゾルダのカードデッキである。
刹那、見上げた視線の果てで少年の笑みが深まる。笑顔を紋様が染め上げ、少年は邪龍へと転身した。
その灰を基調としたカラーリングの異形、オルフェノク。この場に来て初めての同属との邂逅は、海堂にとって最悪のものであった。
「どうしたの……戦ったばかりじゃ力が出せないでしょ? それをそこに翳して使えば、仮面ライダーになれるんだ。早くしてよ」
「……今、なんて言いやがった」
ショーウィンドウを指差しながら話す北崎の言葉に中に並べられた一つの単語に、思わず海堂が反応する。自身でも驚くほど、冷静に。
820:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:11:58 kMEKgW9QO
支援
821:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:12:20 idiMBVUd0
「しょうがないなあ……もう一度言うよ。それを使って変身してよ。仮面ライダーにね」
「……ふざけんな」
カラン、という音を立ててデッキが灰と隣り合わせになる様に床へ落ちる。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
怒りが爆ぜ、海堂の身体が発光する。ライダーであり心底この殺し合いを楽しむ眼前のオルフェノク。
こんな連中の為に、モグラの様な被害者がこれからも生まれていく。誰が認めるものか。
二人目のオルフェノク―蛇の名を冠す存在へと、海堂は姿を変えていた。
「へぇ、オルフェノクなんだ……でも、あまり強く見えないなぁ」
少々期待外れ、といった仕草でもってドラゴンオルフェノクは歩みだす。
一歩、二歩とその歩幅は広がっていき、瞬く間に両者の距離は一メートル程度まで縮まった。
向かってくるスネークオルフェノクの右拳を左腕で弾き、灰に染まった爪を振るう。
「グッ!!」
袈裟懸けに振り下ろされた爪が火花を撒き散らす。
スネークオルフェノクはその重みに思わず呻くが、構わず突き出し始めていた左拳を唸らせる。
822:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:13:11 K5sIh0crP
823:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◆N4mOHcAfck
08/07/05 01:13:17 idiMBVUd0
「ウラァ!!」
しかし、厚い胸板を越えるのにその殴撃は余りにも力不足。
受けたダメージに比べてその戦果は明らかに乏しい。それでも、後悔はしない。
更に左足で地を蹴り、最大限の体重を乗せて一度弾かれた右腕による打撃を再行使する。
ドラゴンオルフェノクが一歩引き下がるが、先程スネークオルフェノクがして見せた様に構わず反撃をしてみせる。
アッパー気味に繰り出されたその一撃は、二度目の大きな火花と共にスネークオルフェノクに宙を舞わせた。
「どうしたの……全然面白くないよ?」
床に打ち付けられ、転がりまわるスネークオルフェノク。体勢を立て直す間もなく、腹部を最大限の力で踏み付けられてしまう。
その動作が五回程繰り返されたところで、ドラゴンオルフェノクが行動を蹴撃に切り替える。
再び転がることになったが、距離が離れた今が好機。もっとも起き上がりやすい体勢になるタイミングで回転を停止させ、素早く立ち上がる。
同じオルフェノクだというのに、こうも力量に開きがある。本当に神様は不平等な奴だと海堂は思う。
「うるせぇぇぇぇぇ!」
懸命に拳を突き出すが、それはいとも容易く受け止められてしまう。
その直後、三度にわたって大爪によるスネークオルフェノクへの侵略が開始される。
まず一撃目。上段から右爪をドラゴンオルフェノクが振り下ろす。到底押さえられる攻撃ではない。
スネークオルフェノクは左足で床を蹴りながら、右足を軸とした半回転でそれを避ける。
ドラゴンオルフェノクの視点から見ると、左へと回避したことになる。
左という回避方向を選択した理由として、左腕による追撃が予想できていたことが挙げられた。
両腕で爪による突撃という名の二撃目を阻止する。舌打ちを耳にして、スネークオルフェノクの両腕に力が篭る。
この行動が間違っていない、という確信を得たに等しいからだ。
824:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:13:46 1I4wD8c30
825:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:13:53 kMEKgW9QO
支援
826:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:14:02 qR5mkUzj0
827:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:14:18 K5sIh0crP
828:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:16:02 1I4wD8c30
829:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:18:27 K5sIh0crP
事実、有効な方法であったかも知れない。 ―北崎の力量が、戦闘時における余裕の持ち方が海堂と同程度まで低かったならばの話だが。
目標を失い、中断された一撃目がギリギリのコースで弧を描く。
振りを素早く、ブレを減らし、体重を乗せ。横振りという三撃目へ転化した右腕を、現体勢で出せる最大の力で叩き付ける。
それでも本来のドラゴンオルフェノクが出せる力の五割にも満たない威力。
いつの間にか行動目的を「攻撃の阻止」から「左腕の拘束」へ変えてしまっていたスネークオルフェノクを引き剥がすには、十分すぎた威力だったのだが。
両腕を拘束に回したが為にがら空きとなった腹部に深い圧迫感と衝撃を覚えながら、後ずさるスネークオルフェノク。
踏み止まれるタイミングを敢えてパスし、更に後方まで下がったのは、ドラゴンオルフェノクの追撃を本能が回避しようとした為だろう。
肉弾戦だけでどうにかなると万に一つでも踏んでいたのがここまでのアドバンテージを取られた最大の要因とようやく海堂は気付く。
虚空に出現させた剣で一度空を切り、感覚を持ち直す。ドラゴンオルフェノクとの間に広げた間合いは、最早半分まで縮まっていた。
「出し惜しみは、君ができる立場じゃあないかな…………さぁ、来てみなよ!!」
言葉通りスネークオルフェノクが剣を片手に向かってくる事実に、北崎は心から歓喜する。
(それでいいよ。最後まで諦めずに向かって来て……それを正面から、叩き潰してやる)
ドラゴンオルフェノクが振り下ろされた剣を受け止めると、一層高い音が辺りに響き渡った。
830:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:19:03 K5sIh0crP
◆
海岸沿いの舗装路を西から東へ進むと、やがて市街中央へと到達することになる。
その際右……つまるところ南を臨むと、視界には港が広がる。
おそらくはここから自分達参加者が各エリアに連れて行かれたのだろうと木場は推測した。
それが分かったところで、脱出への道を構築できるという訳ではない。ただ、きっかけになれば良いと思う。
少なくとも現状において、逃げ場所が存在していない以上、道を切り開く為の手段はゲームという名の殺し合いに立ち向かうことのみ。
ほとんどの参加者は立ち向かっているのだ。ただゲームを「打倒」しようとしているか、ゲームに「勝利」しようとしているかという部分においてのみ異なるだけで。
現在は抑えてこそいるものの、隙を見せれば木場の闇は即座に彼へと語りかけてくる。
―いい加減迷うのは止めにしろ、と。
言葉の表面だけで言うならば、それには木場自身も心底同意している。迷えば迷う程、理想への吊橋は崩壊を早める。その前に渡り切らねばならないというのに。
しかし闇に従う訳にもいかなかった。闇が推奨する行為は、早急に吊橋を渡ることではなく、吊橋を渡るという行為自体を否定しろ、ということなのだ。
今は仮初めの壁で防いでいるだけの邪念と、なんとか決別したい。そんな望みのきっかけ。
それを生み出せただけでも、港に立ち寄った意味があるかも知れない。
木場は再び、北へと曲がっていく道路へと進路を預ける。一見無策だが、円滑な行動に不可欠な支給品の一切を失っている以上、この方法が一番効率的だ。
都市部の中央ならばある程度参加者に出会う機会も多い、と木場は考えたが、そういう訳でもないらしく、東條との戦闘以降新たな出会いは無かった。
故に振り子のごとき思考は均等に揺れ続け、こうして幾度も木場は葛藤しているのだが。
831:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:19:21 1I4wD8c30
832:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:20:30 kMEKgW9QO
支援
833:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:20:38 K5sIh0crP
平淡な道中、左右に連なる建物に行き着く。
入口の前に停車してあるバイクに、デイパックの存在を認めるが、手を出す木場の性格ではない。奪うどころか、中身の確認にすら至らなかった。
木場がデイパックから得るものは、「この建物内に参加者がいる」という情報だけ。
そしてそれを最大限に生かす決意を固める。吉と出るか、凶と出るかは別にしてだ。
迷わず入店する木場。背後からもう一台のバイクが迫っていたことなど、知る由もない。
昼間だというのに余りにも弱い店内の明るさは、僅かにだが木場を不快にさせた。
照明の大多数は沈黙し、非常灯が威勢を放つ現状は昼時という営業時間帯における本来のショッピングセンターにはあまりにも似合わないもの。
けれども、それだけでは不快という感情を生み出すには弱い。数瞬おいて、己に感情をもたらした真の要因を木場は知ることになる。
炸裂音。二つの凶器同士、あるいは一つのそれが何かに接触したことで響いたのだと判断するとともに、何故これほどに大きな音に入店してから今まで気付かなかったのか自問する。
自答はせず、すぐに駆け出す。遠くない――というよりは、近いのだ。
木場が走行に合わせて肩掛けしていたファイズギアを腰に巻き付け終えたタイミングは、炸裂音の原因である剣を構えた蛇を模した異形と、それを強固な手甲で防ぐ龍人の姿を認めた瞬間と同時だった。
834:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:21:04 K5sIh0crP
◆
「ウラァ!!」
スネークオルフェノクの剣がドラゴンオルフェノクの腹部を薙ぎ払い、軽い炸裂音と共に火花が散る。
正に一瞬だった輝き。火花はドラゴンオルフェノクの前進によって掻き消え、続けて突き出された凶爪がスネークオルフェノクを突き飛ばす。
尻餅をつく形になり、相手がこれまで以上に復帰への時間が掛かることをドラゴンオルフェノクは悟る。
「残念だよ……本当に、さ…………あれ?」
自分へと止めを刺そうとしたドラゴンオルフェノクが足を止め、視線を逸らす。
そんな不自然な光景に思わず、スネークオルフェノクもまた起き上がることを忘れ、顔を見上げる。
「ああ、君は確か…………」
緩やかに言葉を並べる北崎は、その場に出現した第三者に見覚えがあった。そう、確か以前抹殺を命じられたターゲットの――
「木場…………」
腰に白銀のベルト―ファイズギアを備え、左手に対応ツール―ファイズフォンを握り、ドラゴンオルフェノクを睨み付けていたのは、紛れも無く海堂の大切な仲間、木場勇治である。
木場が左手首をスナップさせたのに合わせて、ファイズフォンが展開。
コード入力の為用意されたボタン群の中央に位置する「5」を続けざまに三度押し、更に上部に位置するENTERキーへと親指を滑らせた。
準備が完了したことを示す電子音が静寂を再び裂き、閉じられたファイズフォンが手の中で表裏を入れ替える為に回転させられる。
「ふぅん……」
「おいおい…………」
835:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:21:46 K5sIh0crP
動作の完了を面白気に待つドラゴンオルフェノクと、驚愕した趣のスネークオルフェノク。
それらの視線の先、木場は「六つ」の眼が見守る中で、冷静に口を開く。
「……変身」
――Complete――
ゆっくりと斜めから差し込まれたファイズフォンが真横に押し倒され、電子音が鳴り止むのを待たずして閃光を発した。
ファイズギアから溢れ出る紅の輝きが光線を形取り、木場を包む様にして体中を駆け巡る。
刹那、紅色に染まったミッションメモリーがより一層輝きを増し、光線を軸に銀の装甲を形成した。
黄色に輝く複眼、装甲間を駆ける紅の光は輝き続け、時間にやや不釣り合いな薄暗さのショッピングセンターにしばしの間光を授けることとなる。
ファイズへの変身が完了したことを示していた。
ようやくスネークオルフェノクが立ち上がり、神妙な面持ちでファイズに近寄る。
「なんでそれをオメェが使ってるんだよ、おぃ!!」
ここに来る前、スマートブレインの刺客が変身する「仮面ライダー」の一人であろうと認識したばかりの存在。
ただその光景を見ただけなら「木場が俺達を裏切った」で切り捨てられる疑問だが、ファイズはドラゴンオルフェノクに戦意を剥き出ししている様に思えた。
間違いなく二人の敵は共通しており、海堂は木場が敵とは判断できなかった。
「話は後だ、海堂。 ……今は…………」
肩へと掛けられたスネークオルフェノクの腕を解き、ドラゴンオルフェノクへとファイズは向き直る。
この場へと連れて来られる前、既に木場はファイズとしてドラゴンオルフェノクに敗北している。
その強さ、危険性を知っているがためにここで倒すと誓う。
放置すれば間違いなく、被害者が出るだろう―いや、既に出ているのかも知れない。
そして、ここで目の前の悪を討てずしてスマートブレインを打倒などできるのか。答えはNOだ。
これは自分が闇に打ち勝てるということを証明する為の戦いでもあるのだから。
836:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:22:42 K5sIh0crP
「木場勇治……かぁ。君はそっちの吼えるだけの奴とは違って、楽しませてくれるのかな?」
ドラゴンオルフェノクが両手を合わせる。あたかもそれは新しい友達と初めて遊ぶ時の期待に胸膨らませた子供の様で。
ファイズは戦慄を覚え続けるのを嫌い、ドラゴンオルフェノクに殴りかかる。
続け様に三発の拳を叩き込んだところで、力量を計るかの如く大きなモーションで振り上げられた爪が、ファイズの頭上に向けて降下する。
隙だらけのモーションであったが故に回避は容易だった。一歩下がっての左足が、振り下ろされた爪と入れ替わる様にしてドラゴンオルフェノクへ向かう。
平然と腹部でもって迎え撃たれ、左足裏は一切の妨害無くドラゴンオルフェノクの腹部に接触した。
直撃。しかし手応えは皆無で、すぐに左足を離す。少し腰を落としながら再び踏み込み、左右の脇腹目掛けてのコンビネーション。
それでもクリーンヒットの感触が得られないという事実は、改めてドラゴンオルフェノクの装甲の堅牢さを物語らせるものだ。
837:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:23:25 1I4wD8c30
838:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:24:05 K5sIh0crP
ならば守りの薄い場所を狙う。左足で踏み込み、腰を捻りながら握りなおした右拳に力を加え、顔面目掛けて放つ。
「あーあ……」
一撃が通れば確かにダメージは通ったかも知れない。しかしそれはあくまで通ったらの話。
ファイズは右ストレートをドラゴンオルフェノクの左腕によって容易く遮られ、自身の意図していた攻撃をそっくりそのまま返されることになる。
頬に走る確かな痛みに思わず顔を下げる。ファイティングポーズは決して解かないが、あっさりと戦意が落ちたことは否めない。
「君もこの程度? こんなのばっかじゃアレも宝の持ちぐさ…………」
「ウラッァァァァァ!!!!」
ドラゴンオルフェノク追撃に入る直前、ほんの僅かに隙を見せたところへとスネークオルフェノクが切り込む。
これまでで一番盛大な火花が散ると共に、ドラゴンオルフェノクが仰け反る。そこへ渾身のタックルを受け、遂に後ずさった果てに膝をつく。
ファイズがスネークオルフェノクを見上げ、それに答えるかの様な視線の一致を木場は体で感じ取る。
「確かに今はどうでもいいわな。 ……とりあえず、オメェはマシな仮面ライダーみたいで安心したぜ、木場」
「海堂…………」
スネークオルフェノクは剣先をドラゴンオルフェノクに向け、更に続ける。
839:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:24:17 K5sIh0crP
「こいつはどの道倒さなきゃなんねぇ……ちゅうことで、こいつを倒したら俺様に話を聞かせてもらうからな」
「……ああ、勿論」
「一人ずつじゃつまらないし、丁度いいかな」
ゆっくりと立ち上がったドラゴンオルフェノクにファイズとスネークオルフェノクが挑みかかる。
先行したファイズの拳を片腕で捌き、もう一方でスネークオルフェノクの剣と相対する。
手の甲で受け止め、鍔迫り合いに近い形へと発展。下側に回りこませ、剣を持ち上げると、空いた片腕の襲撃。
ストロークの短さから威力が不十分だった為、スネークオルフェノクの動きを鈍らせたに留まる。
後方へ回り込んだファイズのことを考えるとそのまま追い詰める訳にも行かず、鈍っている間にターゲットを切り替える。
仲間を過信しすぎたか、単なる慢心か。ファイズの攻撃動作は威力重視の隙だらけで、向き直ったばかりのドラゴンオルフェノクでも簡単に対処可能であった。
ファイズの胸を覆う装甲が火花によって瞬く。数度に渡って動作を繰り返したことによってファイズが倒れこむ。
至近距離から背部へスネークオルフェノクが一太刀浴びせるものの、意に介さない。
ならば再び突撃して……などということを海堂が思考し、数歩下がった上でドラゴンオルフェノクへと走り出す。
ここで急に反転したドラゴンオルフェノクがスネークオルフェノクの首を押さえ込み、宙へと持ち上げた。
「同じ手は通用しないと思うよ……僕くらい、強くないとね」
「……ちっ…………く……しょう……がぁ…………」
拘束の力は緩まる所か強まる一方で、今にもスネークオルフェノクの息の根を止めてしまいそうである。
何度か蹴り飛ばしてみるが、力が入らない蹴りは当たっているのかすらどうか分からないものまで含まれていた。
到底拘束を解くに値する反撃ではない。更に持ち上げる位置が高まり、声が遠のいていく。
北崎は一秒にも満たない思考の中で判断する。これで一人目は――
840:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:24:47 kMEKgW9QO
支援
841:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:25:12 K5sIh0crP
「…………ッツ!!」
背後に焼きつく痛み。一点だけを、正確に攻めてくる痛覚。ドラゴンオルフェノクは拘束の解除を決定する。
数十センチ持ち上げられていたスネークオルフェノクは着地に失敗、座り込みながら息を整える。
決断してからの行動は見事なものであった。
即座に横へステップし、あわよくば自身を焼く物質がスネークオルフェノクへと照準を切り替えることすら狙って。
ドラゴンオルフェノクの接近に際し、ファイズが銃型に形状を切り替えたファイズフォンへのコードを入れなおす。
「103」から「106」への転化。すなわち、フォンブラスターが光線を長時間照射するシングル・モードから、連射を行うバースト・モードへの切り替え。
―Burst Mode―
五連射される光弾。一発目が胸板に着弾するが、当然単発でのダメージは互いに想定していない。
二発目。通ればおそらくは影響が出始めると判断。右腕に薙ぎ払われる。
まるで自分が直撃を受けたのではないかと勘繰ってしまう威圧感。その持ち主は三発目を左腕でガードする。
それでも、無茶な動きから残り二発の直撃は確実。そこで認識の違いが道を分かつのだ。
三発直撃させれば追撃の隙が生み出せ、尚且つその隙を突けると自身を過大評価―いや、相手を過小評価が正しいが―したのが木場。
この程度の銃撃、適当に遇えば支障なしと判断したのが北崎。
どちらの方がドラゴンオルフェノクの力を正しく把握していたのか。
ドラゴンオルフェノクは怯まない。フォンブラスターが銃声を紡ごうとしたものの、あまりにも遅すぎた追撃。
火花を散らした上で投げつけられ、スネークオルフェノクの前まで転がり続けたファイズ。
両者の様子が、全てを物語っていた。
842:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:25:15 1I4wD8c30
843:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:25:39 K5sIh0crP
この場における現局面に至るまでの攻防が、目の前の敵にとっては遊びだったことをファイズはようやく認識する。
本来ならばより早期にその事実を得ることはできた筈だ。
ファイズは、木場はドラゴンオルフェノクに温存している真の力がまだ残されていることを知っていたのだから。
呻き声を漏らす自分を尻目に立ち上がる、スネークオルフェノクをファイズは臨む。
改めて考え直すと、海堂との、信頼できる仲間との共闘により、自軍を過大評価しすぎていた節もやはり潜んでいた。
今回のパートナーが誰であるかと考えれば、そう思うのも無理は無い。影山と組んでいた時よりはまともな連携を展開する自信もあった。
事実互いにフォローをしながら対抗してきたつもりだが、結果はこれ。現実は無情だ。
じりじりと詰まる間合いに、再び圧迫感を催す。
物事にはスペック差などと違い、どう抗っても覆し様の無い差があることを痛感した。
明らかに「遊び」で戦っていた状態のドラゴンオルフェノクを討ち果たせなかったのだ。
ここから相手が段々とボルテージを上げてくるのか、一気に潰しにくるのか。それは判定できない。
付け入る隙だった慢心という名の急所を見逃した以上、これは負け戦というべきだろう。
それも、ファイズがドラゴンオルフェノクの特殊能力を知り、スネークオルフェノクの精神が燃え滾っているままでるが故に、撤退という二文字は選択肢すら用意されていない。
二人が選べる選択肢は二つのみ。
一、ここから逆転し、ドラゴンオルフェノクを打ち倒す。
二、二人で仲良く死ぬ。
思考が提示した選択肢の内、二人は即座に「二」の選択肢を切り捨てる。
守らなければならない人が、救い出さなければならない人が、導かなくてはならない人がいるから。
面倒みなきゃならない奴が、絶対に許してはならない奴等が、安心をさせてやりたい奴がいるから。
844:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:25:57 K5sIh0crP
「ちょっとだけ痛かったよ。でもそろそろ、遊びは終わりに……ッ!!」
「喰らいやがれぇぇぇ!!!!」
不意打ちという形で今再びゴングが鳴り響く。咆哮と共に投げ付けられたスネークオルフェノクの剣が唸りを上げて空気を二分していく。
残り僅かの慢心、油断といった要素を全て消費させる可能性があるのはスネークオルフェノクも分かっている。
その決意に呼応したファイズが横たわるフォンブラスターを再び握り締め、放つ。
波状攻撃がドラゴンオルフェノクの行動を遅延させている隙に、両脚を揃えて飛翔。
左膝を曲げ、対照に右脚を突き出す。海堂が、スネークオルフェノクが憎む「仮面ライダー」を象徴する技に類似したモーション。
渾身のジャンプキックが頭部に炸裂し、一時的な思考の停止。それを再覚醒させたのは、音と色。
一定のリズムを刻む電子音が一層高い音程になった瞬間。
ファイズの腰から一定のスピードで動き始めた紅の閃光が、手甲に辿り着いて瞳に瓜二つな黄色の輝きを放った瞬間。
正に「気合一閃」とでも評すれば良いのだろうか。
チャージを終えたファイズショットでもって放つ現状における最高の殴撃―グラン・インパクト。
左腕を限界まで伸ばし――その正面からの一撃がドラゴンオルフェノクの腹部に突き刺さる。
下手な小細工を挟まなかった為に、対応の余地を残さなかった。
数歩後ずさるドラゴンオルフェノクに染まり浮かび上がる紅色の「Φ」の紋章は、ファイズ達に勝利を――
「アッハッハ…………面白い、面白い」
――齎さなかった。「面白い」という言葉の内容とは裏腹に退屈そうな口調でドラゴンオルフェノクが呟くと、発生した紋章はあっさり掻き消えた。
次の瞬間、存在が失せていた筈の眼前に、再び悪魔が顔を出す。驚愕したファイズのボディを火花で染め上げ、反転。
スネークオルフェノクが異常に気付いた時には、三度に渡る痛みが全身を駆け巡っていた。
845:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:26:18 K5sIh0crP
――Exceed Charge――
拡散した装甲から、ドラゴンオルフェノクが高速移動を開始したと判断したファイズがEnterキーを押す。
再チャージ。当然見逃される訳も無く、再反転が行われる。
正面から迫る刺突。ファイズはギリギリまで体を反らし――躱してみせた。
更に追撃をガード。チャージが再完了したことを理解。
ファイズが初撃を阻止できたのは、ザビーとの戦闘を通して高速戦闘に対する対処法をある程度自分で固めていたからだ。
ドラゴンオルフェノクは装甲を薄くしている現状において、技を受ける危険性を察知する。
かなりの痛手となるのは間違いない。だからこそ、相手にしない選択を行う。
目障りなもう一匹―スネークオルフェノクを先に始末し、その上で正面から残ったファイズを打ち倒す。
ドラゴンオルフェノクは最後の反転を行い、連撃の果てに姿を元に戻す。
このプランが脆くも崩れ去ったのは、想定より早くスネークオルフェノクが接近していたことだ。
当然高速での攻撃を防ぐスキルがある訳では無い。ドラゴンオルフェノクの侵略による被害は、瞬く間に全域へと達する。
しかし距離が短縮されたことで、そこに第三者の介入する余地が生まれた。
即ち、止めの阻止。庇いに入ったファイズがスネークオルフェノクを貫こうと突き出された凶爪を受け止める。
そしてこの一瞬、ファイズショットがチャージ済みであるという事実を北崎は排除していた。
仮にここでクリーンヒットを浴びたとしても、自分は倒れない。最大限の自身を胸に、もう一方の腕をファイズへと叩き込む。
同タイミングで放たれたグラン・インパクトとの交差。両者が後方へ吹き飛ぶ。
違いはドラゴンオルフェノクが受身をとって床に倒れこんだのに対して、ファイズが壁に思い切り打ち付けられたことだろう。
変身が解け、叩きつけられた衝撃から木場はそのまま意識を失う。
846:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:26:40 K5sIh0crP
「おい、木場、木場ぁ!!」
「どうやら僕の勝ちみたいだね。面倒だから……このまま殺してあげるよ」
九死に一生を得たスネークオルフェノクが叫び、ドラゴンオルフェノクが立ち上がる。
その場の二人は勝者が誰か判断を終える。
終えた後に鳴り響いた電子音の存在は、この形での決着を望まない者が存在することを意味した。
――FINAL VENT――
847:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:27:44 K5sIh0crP
◆
東條がバイクに跨がって海沿いに都市部を疾走していたのは、ある人物との再戦を望んだからだ。
彼を乗せて駆けるバイクは「凱火」。名前こそこうであるが、武装を備えていたりする戦闘用バイクという訳ではない。
元いた場所へと戻る最中、道端に放置されたそれを見つけ、現在に至る。
可能な限り緩めたスピードでの走行中も、東條は念入りに人の気配を探し続ける。
既に姿を消し去っていた木場勇治、まだ見ぬ参加者、或いは自身も良く知るライダー達か。
その中でも特に木場との再戦を心待ちにする。正面から「英雄じゃない」と東條を否定した木場に、証明してやりたい。
道沿いに進んだ結果、その望みが思ったより早く叶うかも知れない。
東條は見たのだ。ショッピングセンターに入店する見覚えのある服装の男を。
胸が高鳴っているのを確かに感じ、東條が凱火を停車させる。
もう一台バイクが停車していることから、内部に木場とは別の参加者がいるのではないか、と推測。
可能な限り気配を殺し、店内へ入る。間もなく戦闘中であることを判断する東條。
本来オルフェノクが三人存在すれば何れかが東條の存在に気付く可能性は高い。
一人でも冷静に気配を探りに移ればアウトだが、三人ともその余裕は無い、もしくはつもりが無かったらしい。
ぶつかり合うニ体のモンスターは、シルエットこそ違えど、カラーリングは木場が最初に変身したモンスターと類似する。
おそらくは同族なのだと推測し、辺りを見遣る。変身に使えそうな物は見られるが、確実にここで変身すれば存在が知れる。
正直なところ一名を除けば残りニ名の生死に興味はない。むしろ相討ちで構わない位だ。
ならばどうするか。自分の持つ奇襲能力を存分に生かすべきだろう。
機会を見て木場が東條と戦わざるを得ない状況へ持っていく。
タイガのデッキなら、英雄の自分ならばそれが出来る筈。
念じる様にして場を離れる。木場の変身したファイズが放つ輝きの強さに目を細めながら。
848:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:27:51 1I4wD8c30
849:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:28:24 K5sIh0crP
◆
タイガへと変身し、遠距離から様子を伺っていた東條は驚愕する。
数で劣勢にありながら容赦なく攻撃を浴びせ続けるドラゴンオルフェノクの強さ。
その光景から東條は一つの仮定を生み出す。
(あいつも倒せば、また僕は英雄に近付けるのかも知れない……)
ターゲットが二人に増えたところで、カードを腰部のバックルに収められたデッキから抜き取る。
後はデストバイザーのワンアクションを挟むだけ。全ての準備が整った。
やがてドラゴンオルフェノクの攻撃でファイズが変身を解除され、更に変身していた男が気絶したことを東條は確認する。
この期を逃すと、木場が北崎に殺害されるのは誰が見ても明らか。つまり―
待ち望んだ奇襲を実行する時だ。切り札を最初から切る。この行為が、東條の並々ならぬ意気込みを端的だが表していた。
――FINAL VENT――
タイガの契約モンスター、デストワイルダーがショーウインドウから飛び出す。狙いは―ドラゴンオルフェノク。
戦闘の様子から、スネークオルフェノクが気絶した木場の仲間だと東條は考えた。故に放置して構わない、とも。
完全に勝利を確信していたドラゴンオルフェノクを、デストワイルダーが捕捉するのに苦労は一切無かった。
得物を連れて接近するデストワイルダーを、店外へ誘導する。自動ドアを十メートル程越えた先でクローを構え、待機。
摩擦を引き起こし、火花を舞い散らせながらの接近。ドアを越えたところで、東條がカウントダウンを開始した。
残り九、八、七、六メートル。しかしその先を紡ぐことは無く――
「誰だか知らないけど、気に入らないなあ……」
850:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:28:25 4kHIOf1/O
支援
851:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:28:47 K5sIh0crP
ドラゴンオルフェノクが右膝を振り上げ、デストワイルダーの進行を停止させる。
東條は疑問を持つ。余りにもドラゴンオルフェノクの迎撃に「苦労」という雰囲気を感じることができなかった為だ。
立ち上がったドラゴンオルフェノクの攻撃を無防備な状態で受け続けたところでようやく一つの答えにたどり着く。
(……こいつ、ワザとここまで引き摺られてきたのか!?)
ドラゴンオルフェノクが変化を解き、北崎の姿へと戻る。態々変身を解除したその余裕。
間違いなく「何か」を起こす気だと東條も判断し、タイガの変身を解く。
戦闘中における変身の解除は、別の変身を意味することを木場との戦いで既に学んでいる。
ならば切り札を使い終えたタイガよりは、万全の状態で戦えるもう一つの力―ガイへの変身を行使するべきと東條も判断したのだ。
「擦れて背中が熱いなぁ……へぇ、君も別の仮面ライダーになれるんだ」
北崎がバイクのデイパックから黄金のベルトを取り出す。
同じバイクのミラーへと東條がデッキを翳し、再度バックルを装着する。
手にしたベルト―オーガギアを、北崎も合わせる様に装備。オーガフォンを展開する。
―自分より強い存在が「0」であることを証明する為に。
―自分以外の参加者を「0」にする為に。
―それらの思いを束ねもう一度「0」のコードを入力し。
「試してあげるよ……変身」
「変身!!」
重なる二つの言葉は、再び幕が上がったことを示していた。
852:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:30:04 kMEKgW9QO
支援
853:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:30:03 K5sIh0crP
◆
オルフェノクへの変身を解いた海堂は動転していた。突如出現した怪人が、オルフェノクを引き摺っていって。
どうすれば良いのかは判断しかねていたが、確かだと言えるのは「あのオルフェノクを放置してはいけない」ということ。
激戦の中床に佇んだままのデッキが視界に入る。
『それをそこに翳して使えば、仮面ライダーになれるんだ』
北崎の言葉を思い出す。やはり使う気にはならない。もう一度オルフェノクに―
「っておい、どういうこっちゃ」
―変身することはできなかった。もう一度力を込めるが、やはり結果は変わらない。
『戦ったばかりじゃ力が出せないでしょ?』
ようやく気付く。「一度変身を解いたら、すぐには変身できない」と。
かといって放置もしておけないのが海堂。デッキを掴み、すぐに走りだした。
去り際に目を覚まさない木場に目をやる。あれだけの攻撃を受けたのだ、気絶は当然の結果だろう。
「お前には助けてもらったからな……木場。 ……いいぜ、今回だけは使ってやる」
変身を終えたばかりの二人のライダーが海堂の出現に気付き、視線を浴びせ掛ける。
二人のライダーが勝敗を決した時、勝者は再びこちらを襲ってくるだろう。
ならばどうするか――簡単だ、二人纏めて倒せば良い。
「仮面ライダーの、力って奴をよぉ!!!!」
非道なライダー達を必ずここで討つ。決意と共に、海堂はデッキを握り締めた。
854:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:30:44 K5sIh0crP
【G-5 北東部 ショッピングセンター前】【午前】
【海堂直也@仮面ライダー555】
【時間軸】: 34話前後
[状態] :体の各部に中程度の打撲。激しい怒り、2時間変身不可(スネークオルフェノク)
[装備] :カードデッキ(ゾルダ)
[道具]:無し。
[思考・状況]
基本行動方針:「仮面ライダー」を許さない。
1:二人の仮面ライダー(オーガ、ガイ)を倒す。
2:赤と緑のライダー(アマゾン、歌舞鬼)の危険性を伝える。
3:まだ対主催。
※ 澤田の顔はわかりますが名前は知りません。また、真魚の顔は見ていません。
※ モグラ獣人の墓にはガーベラの種が植えられています。
※ 第一回放送は知っている名前がモグラのみ、ということしか頭に入っていません。
※ 変身制限について知りました。
855:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:31:02 K5sIh0crP
【北崎@仮面ライダー555】
[時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。
[状態]:全身に疲労。頭部、腹部にダメージ。背部に痛み。オーガに変身中。ドラゴンオルフェノクに2時間変身不可。
[装備]: カワサキのZZR-250、オーガギア
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~1個)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。
1:ガイとの戦いでオーガギアを試す。
2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。
3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。
4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。
5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。
6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物と見なしています。
※三田村晴彦の生死に興味を持っていません。
【東條悟@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】:44話終了後
[状態]:中程度のダメージ。疲労中程度。2時間変身不可(タイガ)、ガイに変身中
[装備]:カードデッキ(タイガ、ガイ)、「凱火」(Valkyrie Rune)
[道具]:基本支給品×2、特殊支給品(未確認)、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、芝浦の首輪
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる
1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』
2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい
3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。
4:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。
備考
※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません
856:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:31:38 K5sIh0crP
【G-5 北東部 ショッピングセンター内】【午前】
【木場勇治@仮面ライダー555】
【時間軸:39話・巧捜索前】
[状態]:気絶中。全身に中程度の打撲。他人への僅かな不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。二時間変身不可(ファイズ)
[装備]:ファイズギア
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催者及びスマートブレインの打倒、脱出
1:海堂が心配だ。
2:長田、加賀美の捜索
3:首輪の解除
4:死神博士、ゴルゴス、牙王、東條(名前は知らない)に警戒 。影山はできれば助けたい。
5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない
※備考
※第一回放送を聞き逃しています。
※付近の海堂のデイパック[基本支給品、ゼロノスカード(赤)×3、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ)]が放置されています。
※気絶中につき、思考・状況は気絶寸前のものです。
※東條の乱入をまだ知りません。
857:終わるのは遊び、始まるのは戦い ◇N4mOHcAfck(代行)
08/07/05 01:32:22 K5sIh0crP
投下終了です。
支援してくださった方々、代理投下の方に感謝します。
----
以上、代理投下終了です
858:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:40:44 kMEKgW9QO
投下&代理投下乙です!
うおおおっ、オルフェノク入り乱れの戦闘に東條が乱入!!
息もつかせぬハイテンションバトルに釘づけになりました!
北崎、圧倒的な強さの上に今回初お目見えのオーガと怖いったらないぜ!
執念の東條、海堂との戦いの行方が気になりまくりです!GJ!!
859:名無しより愛をこめて
08/07/05 01:55:02 4kHIOf1/O
投下&代理投下乙です!
戦闘描写が細かくかつイメージしやすいものでとても良かったと思います!
木場と海堂のコンビはやっぱりいいですね……北崎がオーガへ変身する時の描写も印象深い。
そしてガイ、オーガ、ゾルダの乱戦を示唆した引き……思わず期待せずにはいられません!
GJ!!
860:名無しより愛をこめて
08/07/05 02:50:52 qR5mkUzj0
投下、代理投下ともに乙です。
混戦バトルが面白かった。
オーガへの変身もはらはらさせました。
GJ!
861:名無しより愛をこめて
08/07/05 03:11:23 AReVMmpuO
北崎VS東條の池沼ライダーバトルに参加できないダグバ涙目
862:名無しより愛をこめて
08/07/05 19:35:39 xzp2cvXB0
投下、代理投下共に乙でございます。
更なる大混戦の幕開けを感じさせる引きに期待せざるを得ない!
863: ◆CIPHER0/kY
08/07/05 20:14:45 K5sIh0crP
◆N4mOHcAfck氏乙でした。
今の所無傷なファイズ勢5人中3人のガチバトルにヤバい子が……!
どう転がるかわからない幕切れにハラハラです。
ええと、こちらなのですが今日中はちょっとキツい感じなので延長をお願いします。
864:名無しより愛をこめて
08/07/05 20:30:55 qR5mkUzj0
>>863
了解です。頑張ってください
865:名無しより愛をこめて
08/07/05 21:31:00 kMEKgW9QO
>>864
了解です!
楽しみにお待ちしております。
866:名無しより愛をこめて
08/07/06 02:04:47 rwtWnSiUO
>>863
執筆がんばってください
しかし貴重な首輪解除役を仮想現実にされたりステルス候補ズガンされたり
尻拭い本当にご苦労さまです
867:名無しより愛をこめて
08/07/06 10:25:07 ej3G8Vjr0
>>863
楽しみに待っています!
868: ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:01:30 azObOV4o0
先日はご迷惑をおかけしました。
死神博士、影山瞬、風間大介、城戸真司予約します。
869: ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:23:09 azObOV4o0
思ったより早く上がったので死神博士、影山瞬、風間大介、城戸真司を投下します。
870:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:23:43 azObOV4o0
「行ってしまったか…」
朝日を反射させて輝きながら走り去っていく電車を死神博士と影山はただただ眺めていた。
「これでこの電車はもう使えんな…」
午前7時。線路の通るエリアが1つ禁止エリアとなってしまった。死神博士は再び地図に目を通すが、駅に関する記述はどこにも見当たらない。事実、彼らが駅を見つけられずに電車に乗りはぐったのはそのためだ。
「さて…どうしたものか…」
死神博士は考え倦ねる。駅の場所が分からない以上、この路線で北上するのは危険だ。禁止エリアに突入する前に安全に電車から降りられる保証はない。
「あの~、死神博士。ちょっと宜しいでしょうか…?」
自信なさげに、それでいて甘い声を絞り出す影山。彼が自分よりも上に位置する人物と接するときはいつもこうだ。最も本心から目上の者を尊敬することもあまりないのかもしれないが。
「何だ…影山?」
「電車が使えなくなったのでしたら、徒歩で移動出来る距離にある施設に向かいませんか?」
影山は死神博士の見る地図上の放送局と病院を指で差し示す。
「特に…病院なんて…どうでしょうか? 治療器具は闘いに必要かと…」
影山の態度に死神博士はすぐに意図を察する。
「そうか。背中の傷が痛むか?」
図星を突かれた影山は一瞬たじろぐが、またすぐに平静を装って話し始める。
「…いや、そんなことは…ただ少しでも死神博士のお役に立ちたいだけでして…」
「もういい…確かに一緒に行動する以上、お前の治療もしておいた方が良い。病院へ向かうとするか」
「はい! ありがとうございます!!」
871:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:24:34 azObOV4o0
高く上り始めた日の光が彼らを照らした。都市部を探索するために別行動をとった"城戸真司"、"風間大介"。仲間との合流を願いつつ、彼らは都市部へと南下していた。
「そろそろ病院に着きますね」
そう語る大介は、出来れば都市部を探索した後、合流地点である病院へ向かうつもりであった。しかし、南下の途中で特に寄る必要性のある場所も見つけられず、予想よりも早く目的地へ到着する結果となった。
「城戸さん…」
大介は黙ってドレイクグリップを構え、城戸に見せる。
「…分かりました」
城戸もその意を汲み取った。病院に待ち受ける者が必ずしも友好的とは限らない。二人はそれぞれの変身ツールを用意して病院へと近づいていった。
872:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:25:19 azObOV4o0
「…っ!」
「やはり痛むか…?」
「いや! 大丈夫です! ありがとうございます!!」
病院の一室。影山の背中を治療しながら死神博士は影山から話を聞き出していた。人類に襲いかかる怪物"ワーム"。それに対抗する組織"ZECT"。そしてワームに対抗する手段"マスクドライダーシステム"。
"マスクドライダー"、すなわち"仮面ライダー"。自分の知るライダーとは人体に改造を施す必要性がないという点で大きく異なった。
(これならば一般戦闘員ですら強大な力を得られる。マスクドライダーシステム…是非ともショッカーに加えたい技術だ!)
そのとき、博士達のいる病室の扉が開いた。
「何者だ!」
鋭い鎌を構えた死神博士に訪問者達は優しく語りかける。
「待ってください! 俺達は闘うつもりはありません!」
「あなた方は…影山!?」
「…風間か!?」
「それでは…あなた方はこの殺し合いには乗っていないんですね」
死神博士、影山に風間と城戸も加わり、情報交換を進めていく。といっても、死神博士だけは言葉巧みに自分のことは語らずに話を聞き出しているだけなのだが。
そんな彼らの周りを蜂と蜻蛉が飛び回っている。
「ああ、勿論だ。今は対抗する力と情報を集めているところだ。なぁ、影山?」
「は、はい! そうです!」
「じゃあ、二人とも俺達と一緒に行動しましょう! もうじき響鬼さん達も来るはずだし」
「ほう…まだ仲間がいるのか。それは頼もしい」
死神博士は考える。自分の知らない仮面ライダー達。彼らが自分の真の目的を知れば敵対することになるかもしれない。だが、ゼクターやカードデッキという未知のライダーシステムに強い興味を持った。影山は思っていた以上に自分に従順で彼からボロが出ることはなさそうだ。
(今暫くは…正義の味方に付き合ってみるのも悪くはないか…)
だが、博士は知らない。彼らの仲間に"もう一人の一文字"がいることを。
一方、大介も考えていた。影山は確かに信用出来る人物ではない。だが、今この場では事を荒立てるべきでもない。
(今暫くは…様子を見るか…)
城戸は新たな仲間との出会いを素直に喜び、影山は城戸のデッキと風間のハイパーゼクターが気になっているようだ。
あまりにちぐはぐな仲間達の未来は如何に…………
873:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:25:54 azObOV4o0
【死神博士@仮面ライダー(初代)】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:G-4 病院】
【時間軸】:一号に勝利後。
【状態】:若干疲労、擦り傷程度の傷多数
【装備】:鞭
【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王
【思考・状況】
基本行動方針:打倒本郷、及び一文字。この殺し合いをショッカーの実験場と化す。
1:影山を利用して戦いを有利に進める。
2:仮面ライダーを倒す、牙王とゴルゴスも倒す。
3:ゾル大佐?そいつは後回しでいい!
4:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。
5:未知のライダーシステムの技術を可能な限り把握する。
6:影山をショッカーライダーとして導く……?
7:利用できそうな人物を集める、障害となりうるのであらば排除。
※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。
また、第一回放送で呼ばれた一文字隼人(O)は一文字隼人(R)だと思っています。
※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。
尚、キック殺しは問題なく使えます。
※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。
※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。
874:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:27:42 azObOV4o0
【影山瞬@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:G-4 病院】
【時間軸:33話・天道司令官就任後】
【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。
【装備】:ザビーゼクター、ブレス
【道具】:支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品0~2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:生き残り、脱出する。
1:取り敢えず死神博士に協力する。
2:天道総司を倒した参加者、牙王は自分の手で倒す。
3:自分に使用可能な武器・変身ツールの確保。
4:木場とは出来れば会いたくない……。
5:仲間を集める。
※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。
※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。
※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。
875:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:28:28 azObOV4o0
【風間大介@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地G-4 病院】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:鼻痛(鼻血は止まっています)
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター
[道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ)、ハイパーゼクター
【思考・状況】
基本行動方針:戦いはなるべく回避し、できるだけ早く脱出する。
1:都市部の探索。仲間との合流。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかがどうなったのか心配。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける
※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。
※変身制限に疑問を持っています。
876:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:29:19 azObOV4o0
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:G-4 病院】
[時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前
[状態]:全身に軽度の痛み、芝浦の死に悲しみ
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
1:仲間を集めて主催者打倒 。
2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…?
3:本郷ともできれば再度合流したい。
4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。
5:手塚に似てるなぁー。
[備考]
※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。
※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。
※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。
※志村について話していません。
※カブト世界について把握しました。
[共通備考]
※死神博士を除く三人は互いに所持品、行動方針、出身世界程度の情報交換をしました。
877:ちぐはぐな仲間達 ◆cW9wr8uD4A
08/07/06 19:31:03 azObOV4o0
以上で投下を終わります。
878:名無しより愛をこめて
08/07/06 20:23:44 le2uqI870
投下乙。
まさかこの四人が集まるとはw
死神博士が黒いが、どう動くのか。
一文字との再会がどう影響するのか。でも影山はしょせん影(ry
今後が気になる展開でした。GJ!
879:名無しより愛をこめて
08/07/06 20:30:41 ej3G8Vjr0
投下乙です!
影山が影山らしくてGJでした。
影山がいるんで風間のパーゼクの存在がどうでるか楽しみですね。
今後が気になります!
880:名無しより愛をこめて
08/07/06 21:03:46 JSoHaFJ/0
いつもながら速筆乙です。
先行き不安なチームの誕生ですね。一文字、ハナ、ヒビキが合流したらどうなることやら。
881: ◆RIDERjbYCM
08/07/06 22:00:34 qDf9A8tn0
>>857
GJ!
海堂対北崎の本気バトルに震えました。愚痴りながらもゾルダをとった海堂に男気を見た……っ!
木場の葛藤に、二人の邂逅と仮面ライダーとしての疑心。あと北崎無双。
最後に乱入した東條相手に、ついにオーガきたああああああ!!
そして一人眠る木場……と続きが気になる引きでした。というわけで、
海堂直也、北崎、東條悟、木場勇治、金居、桜井侑斗、香川英行、風のエル予約します。
>>877
こちらもGJ!
まさかこの二組がくっつくなんて……影山は本当に影山だなぁwww
一文字との因縁も楽しみで、博士がなんか一人で輝いてるw
集結とそれに対する波乱の予感……後が楽しみです。
882: ◆deggScNisI
08/07/06 23:45:27 y/9Z2JiL0
>>877
投下乙です!というかなんというちぐはぐな面々…
死神博士の渋さが一段と輝きそうな気がするw
志村純一、手塚海之、日高仁志、ン・ダグバ・ゼバ 予約します
883: ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:15:32 W+G5osJjP
>>877
投下乙です。なんてこったい……w
こちらもただ今より投下します。
884:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:16:20 W+G5osJjP
Ring a-ring o’roses,
A pocketful of posies;
ashes! ashes!
we all fall down.
*
黒いテーブルとステンレス製のシンク、壁際の棚に並ぶガラス製の実験器具。ここが何か科学的な研究をしている場所であることは間違いない。正直な所、北條にとってはどちらかと言えば鬼門に近い環境である。
それでも情報を集めるだけ集めれば、ある程度糸口が見えて来るだろう。一度糸口を掴んだら、それを客観的に分析して行くことで必ず答えにたどり着けるはずだ。
孤高の瞳で自分を見据える男を引き連れて、北條は建物を一巡りした。可能な限りの手がかりを探すためだ。本当は連れの男にお前の首輪を見せろと言ってやりたい所だが、生憎冗談が通じる相手とも思えない。
三階の通路の突き当たり、関係者以外立ち入り禁止と書かれた部屋の奥からは低いモーターの唸りが聞こえて来る。北條はノブに手をかけて試してみたが、どうやら鍵がかかっているらしく一向に開かない。
「退きたまえ」
尊大な言葉に方をすくめつつ場所をあけると、乃木がゆっくりと扉に歩み寄った。
次の瞬間、扉が弾け飛ぶ。
乃木が扉を蹴破ったのだと理解したのは、彼がゆっくりと脚を下ろすのが見えたからだった。
885:名無しより愛をこめて
08/07/07 00:16:43 ypGQNZOQO
886:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:16:53 W+G5osJjP
やけに広い部屋の中は複数のモーターが回り続けるむずがゆい音に満たされていた。室温が外より高く感じるのは、おそらく電子機器の発熱のせいだろう。一面の壁を覆う棚には、隙間なくケージが並べられている。モーターは、そのケージの一つ一つにつけられているらしい。
手前の方のケージは空で、藁の回りに乾いた木の葉と砂が敷き詰められている。手前のカードに日付けが二つ書き込まれているところを見ると、中に入れられていた実験動物は後者の日に死んだのだろう。
奥に進むほどに、実験動物の生存期間は長くなっている。ここで行われていた研究が何らかの成果を生んでいた証拠だ。
黒い天板の傷にまで汚れのしみ込んだ中央の作業台には液体窒素のボンベが備え付けられ、不穏な雰囲気を漂わせている。それらはただ単に、実験動物から摘出した組織片を瞬間凍結するための道具に過ぎないのだが、それがわかった所で気休めになるものでもなかったろう。
向うの方で何かが鳴く甲高い声が聞こえ、北條がそちらを振り返る。棚の一番隅のほうで、モーターの駆動音に埋もれて何かが乾いた雑音を立てていた。
足を早めて近づくと、そこにいた生き物が怯えたのか、乾いた音が聞こえなくなる。だが迷うことはなかった。棚一つ、まるまる中身の残っている場所がすぐに見つかったからだ。
乃木がわざとらしく杖で棚を叩いた。その振動で、眠っていたように見えた鼠の身体がいくつか、粉々に崩れ落ちる。
どこかで見た現象だ。
それでもいまだ形を残し、所在なげにケージの隅で床を引っ掻いているモルモットが三匹ほどいる。
ケージのふたを開けてみると、げっ歯類独特の臭いに混じって独特のほのかにバラの香りがした。敷き詰められている木の葉と思っていたものは、花びらだったのかも知れない。
掴もうと延ばした北條の手を丸くなって避けると、モルモットは蓋の隙間から素早く逃げ出した。追いかける暇もない。不運な小動物は捕食者の毒牙を逃れ、弾けるような早さで棚の裏へと姿を消した。
* * *
887:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:18:33 W+G5osJjP
厳しい目で窓の外を伺う城光の腹が、遠慮がちに鳴る。やはりおつまみ程度では腹の足しにもならなかったのだろう。
「あとでカレーでも作りましょうか」
嫌みでも社交辞令でもない,純粋な笑顔を浮かべて五代が問う。
苦悩など微塵も感じさせないこの表情に騙される者は多い。勝手に誤解したあげく、苛立ちを抱く者もいる。だがこの表情は、決して彼が痛みを感じないなどということを意味するわけではない。
どれほどの痛みに打ちのめされても、守るべき誰かの笑顔を胸に抱いて行きてゆける強さを現しているに過ぎない。
その笑顔が陰ったときこそ、彼が戦士クウガとして得た力に敗北するときだろう。
「勝手にしろ」
無愛想に切り捨てる光の言葉に、五代は更に笑顔を輝かせた。
「じゃあここの台所、ちょっと見てきますね。たまねぎあるかな……」
「たまねぎだと!私を殺す気か!」
一瞬前とは真逆の熱烈さで、光が噛み付く。
「あ、ひょっとして、野菜が苦手、とか……おにぎりのほうがいいですか」
「もっとまともな食いものはないのか?ステーキとか」
「ステーキカレー?」
「まずカレーから離れろ!肉だけでいい!」
文句こそつけているが、食べる気はまんまんらしい。五代は小さく吹き出すと,口元を押さえて台所へと消えた。
それを見送った光が、仏頂面のまま玄関へと歩み寄る。細い隙間を開けて覗く扉の外には、一台のバイクが止められていた。
どうにか使いこなす方法は覚えた、程度の技術であの場を逃れられたのは、単に相手が見逃してくれたからに過ぎない。屈辱的だが肯んずるほかない事実だ。
先にバイクであの場を逃れたイブキは、例のバイクを「自分のもの」と言っていた。ならば逃れる途中で大うつけをやらかすこともないだろう。後は、どうやって彼らを見つけ出すか、だが……。
玄関に生けられた花は萎れ、花びらも茶色くくすんで元の色は伺い知れない。ただ、ほのかに甘い香りが残っていることで、その花の美しさも漠然と想像がつく。
美しい花には毒がある。カテゴリー・クイーンのアンデッドである彼女は、そのことを誰よりよく知る身だったが。
888:名無しより愛をこめて
08/07/07 00:19:15 ypGQNZOQO
889:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:19:26 W+G5osJjP
奥でフライパンかなにかが落ちる明るい音が響く。光は肩をすくめて片足を玄関の扉に押し当てた。
靴底の形が、白い灰のようなものでくっきりと扉の上に刻まれる。
* * *
拳で弱々しく扉を叩き続けるような音が、いつまでもいつまでも当たりに響いている。
*
制服が濡れたまま、身体は冷えてゆくのに拳の痛みだけが鋭く差し込んでくる。骨の脆い折り畳み傘は、激しい風の一吹きでひしゃげたまま何処かへ飛んで行ってしまった。稲妻の閃きに身を縮めた次の瞬間、再び夜の暗い闇と残酷な雨の音が辺りを閉ざした。
カーテンの隙間から漏れるほのかな明かりは目の前にあるのに、手が届かない。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………。
許されないことを知りながら、少女はひたすらに扉を叩き続ける。それが開かれることを望んでいるのではない。ただ、ほかにどうすればいいかわからなかった。帰る場所も、自分を待っている人も、どこにもありはしない。
許されることも、受け入れられることも、守られることもない。その事実を知りながらも、彼女は憑かれたように扉を叩き続けた。水を吸って重くなった制服が胸にのしかかり、締め付ける。
ここを離れたら、私はもう消えるしかない。定められた絶望を受け入れるしかないのだから。
*
はっと目を覚ますと、肩からずり落ちた毛布が胸元で重なっているのが目に入った。
890:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:20:06 W+G5osJjP
息苦しく感じたのはこのせいだろう。考える前にそれを肩まで引き上げて、結花はふと辺りに視線を巡らせた。
自分は見たことのない部屋のソファに横になっている。閉め切られた雨戸のほんの僅かな隙間からは、微かに光が流れ込んでいた。
何か小刻みに叩く音が聞こえて来る方向を振り返ると、そちらからも明かりが漏れている。誰かが動いているのか、床に影がちらついていた。
毛布をその場に置き、足音を潜めてそちらに近づく。
中を覗き込もうとした途端、ちょうど両手に鍋を持ったイブキと鉢合わせになる。
「おはよう」
「あ、はい……おはようございます」
「お茶碗とって来てもらっていいかな」
何か言われると逆らえないのは、対人恐怖症の気すらある彼女の難点と言っていいかも知れない。台所に滑り込むと、食器棚を開けた。シンクの上にまな板と包丁がそのままにされているのが気になって思わず手を伸ばしてしまう。
洗い桶を逆さにし、茶碗と箸を持って部屋に戻ると、イブキは雨戸を開けている所だった。
先ほどは暗くてそこまで気づかなかったが、部屋の中央にはテーブルがあり、無造作に鍋が置かれている。イブキは窓を閉めて席につくと、結花の手から茶碗を受け取った。
炊飯器があるのになぜか鍋で焚いたご飯。具がやけに小さいけんちん汁。皮の一カ所だけが黒く焦げたソーセージ。これだけ見ると単に稚拙にしか見えないが、イブキの料理の腕は主にキャンプで鍛えられたものだと知っていればそれなりに納得は行くだろう。
彼は茶碗に銀シャリを山と盛ると、それを結花の前に置いた。ついでにけんちん汁もどんぶりにたっぷりよそる。およそ女子高生には多過ぎる量だ。
「いただきます」
ご丁寧に手を合わせ、イブキが箸に手を伸ばす。黙々と半分ほど食べてようやく、結花が手を付けていないことに気づく。
「食べた方がいいよ」
簡単にそう言って、あさつきを散らしたどんぶりを押す。その手首の辺りは、赤く腫れ上がっていた。
「あの……痛くないですか」
891:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:20:29 W+G5osJjP
「痛いよ」
にっこり。切れた口元に血をにじませたまま,イブキはお手本じみた笑顔を作る。
「大丈夫ですか」
「慣れてるしね。これが仕事だから」
そう言いながらも疲れか痛みか、僅かに頬が引きつっているのは致し方ないことだろう。だが結花にとっては重荷だった。自分の存在にはなんの意味も価値もない、そう言われているように感じて俯く。
「ごめんなさい」
ぽつりと呟くその声に、イブキが箸を止めた。
「ごめんなさい……私、何もできなくて」
許されない、と思いながらもそう口走る。
口走るからには、心の何処かに『許されたい』と言う気持ちがあるのは間違いない。幾度その気持ちを裏切られ、突き離されてきたことか。それでも諦めきれないのが彼女の一番の弱さだった。
鞭打たれることをむしろ期待すらしながら唇を噛む少女に向かい、イブキは不思議そうに首を傾げる。
「なんで謝るの?」
「だって、私……ぜんぜん、力になれなくて。迷惑ばかりかけて……」
「戦いたくなければ、戦わなくていいんだよ」
イブキは当然のようにそう言うと、けんちん汁の中身を箸ですくった。
「君みたいに、戦えない人たちを守るのが、僕たち『鬼』の仕事だよ。だから、任せてくれればいい。いまはまず、朝ご飯を食べるといいよ」
当たり前の事を、当たり前のように、当たり前の口調で答えるイブキ。その当たり前の事こそが、結花には最も縁遠いものだった。嬉しさよりも困惑が先に立ち、そのまま顔を伏せて泣いてしまう。
892:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:20:48 W+G5osJjP
なぜそうなるのか、イブキには皆目見当がつかない。もともと宗家の人間として、ちやほやとまではいかないがそれなりの好意と尊敬に囲まれて育った彼からしてみれば、周囲の人間を信頼出来ないということ自体が想像を絶する。
先ほど対峙した男が口にした言葉が、ふと青年の胸をよぎった。
少女を不安にさせるのは、彼女自身が抱く影なのだろうか。それがどのようなものなのか、訊ねるのは酷だろう。それで問題が解決するとも思えない。
少なくともいま彼の目に映るのは、何かに怯える少女の姿、それだけだ。
自分は響鬼ほど強くない。斬鬼ほど達観しているわけでもない。どれほど不安でも、宗家の鬼として戦わざるを得ない星の元に生まれた以上は戦うしか、弱い者を守り続けるしかなかった。
弱い者。それが人であろうとも、そうでないとしても。誰かを守ることが自分の使命なら、それを果たすことでしか自分は生きていけないだろう。
迷いはある。恐れもある。だが迷いや恐れを抱いて立ち向かえるほど、戦いは甘いものではないと知っている。
だから今は彼女の正体に関する疑問はさておき、彼女を守ることが自分のなすべきことと心に刻む。この見込みが誤りならば、改めて『彼女から』弱い者を守るしかない。
イブキはまだ湯気の立つどんぶりを結花のほうに押しやった。
* * *
893:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:21:12 W+G5osJjP
人気のない郊外を、ゴ・バダー・バは疾走する。その道のりは先ほど風見志郎が駆けたものと似通っているが、目的は異なっていた。
彼が目的とするのは場所ではなく、物だ。
地図に記された研究所の辺りを確かめてみるが、そこにバイクの影はない。
こうまで『ハズレ』が繰り返されると、さすがに苛立ってくる。もともとリントの数は東京より遥かに少ないのだ。この調子ではどれだけ獲物がいることか。
まあ、いざとなれば最初の放送で映っていたバイクの集団を狙えばいい。この会場全体を警護しているならばそれなりの数はいるだろう。少なくとも、ゲゲルの完遂に十分と言えるほどの数は……。
地図を片手に次の行き先を決めようと周囲を見渡したバダーの視線が、道路の上で止まる。
アスファルトに刻まれた、真新しい黒い轍。それが二筋、南へと続いている。
この場を逃れようとした者がつけた痕だが、そんな瑣末事など彼には関わりのないことだ。ただ獲物がいる、そのことだけを頭に轍を追い始める。
所々の角に残る黒いしるしは、逃亡者がいかに急いでいたかーーーーそして、いかに運転技術に精通していたかを物語っている。それらを手がかりに、バダーは乗り手の足取りを追った。
畦道の傍らには何かが刈り取られた畑が一面に広がり、シートを外されたビニールハウスの枠が朝の風に晒されて心もとなく立ち尽くしている。閑散とした風景の中、バダーは黙々とバイクを走らせる。それは狩人が……むしろ猟犬が獲物を追いつめる光景に似ている。
*
894:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:21:27 W+G5osJjP
彼らの側を一人の戦士がかすめて行ったことなどつゆ知らず、北條と乃木はロビーに戻って来た。
北條の手には、ラットの飼育室から持ち帰って来た一冊のファイルがある。彼はそれを手にしたまま、壁に貼られた全島図を指でなぞった。
「この地図を見る限りでは、この島の住人は十二万七千余名、およそ十三万人です」
観光用なのか、所々にイラストや説明書きのちりばめられた地図は、人気ない建物の中でどこか物寂しく映る。北條はいたたまれなくなったかのようにそれから視線をそらし、乃木を振り返った。
「彼らは、どこに行ったのだと思いますか?」
「知らないな。私にはどうでも良いことだ」
すげなくあしらった乃木が、何かを聞きつけて眉を動かす。
「私は、彼らが皆殺されたのだと思います。スマートブレインという会社に」
北條はファイルを側のテーブルに置いて軽く繰った。そこにラットのケージの写真が何枚も並べられている。ケージの底に敷き詰められいるのは、なにかーーーー青いものだ。
「面白い」
乃木は呟くと、床に転がったの鉛筆を手に取った。ダーツのようにそれを鋭く放つと、甲高い鳴き声が上がる。
乃木がゆっくりと歩み寄り、鉛筆の突き刺さった鼠の死体を拾い上げる。
「実に面白い。狂気の沙汰だ」
喉を鳴らして笑う乃木の手の中で、小さな骸は少しずつ灰と化して崩れてゆく。
* * *
895:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:22:32 W+G5osJjP
おそるおそる朝食に手を付け始めた結花をそのままに、イブキは荷物を確かめ始める。
自分が拾って来たのは本来自分に支給されたデイパックではなかったようだ。その中に入っていたものの一つに、彼は目を留める。
アサギワシ。使い慣れた青いディスクアニマルがそこにあった。
鬼の修行を積んだ者でなければ容易には扱えないこれが他人のーーーー北條の所持品に含まれていたことに驚くと同時に、自分の手元に回って来た幸運に感謝する。
式神は力でこそ鬼に及ばないが、使いこなせば大きな戦力になる。変身に制限が加えられている現状では心強い味方だ。
彼はアサギワシをベルトに吊るし、デイパックを閉じた。
振り返ると、結花が少しずつではあるが箸を動かしているのが見えた。少しは気持ちが落ち着いたのだろうか。やや安心しながら、イブキはあまり刺激しないように視線をそらすと、窓の外を眺めた。
庭は白い砂かなにかに覆われ、朝陽をまぶしく照り返していた。並んだ素焼きの鉢に寄せ植えされた花々は、水涸れしてか色鮮やかなままに萎れている。その中で、枝葉を残したまま首の部分だけが落とされている株があった。
余りに不自然なその立ち姿に疑問を抱いた時、不意に軽やかなチャイムが鳴った。
何の音なのか理解するまでにひと呼吸ほど。あれ、と思った瞬間に再びチャイムが鳴る。窓を少し開けると、ブロック塀の向うからバイクのアイドリング音が聞こえて来た。
すぐに玄関に回って靴を履いたイブキは、壁越しに甲高い悲鳴を聞いて慌てて外に飛び出した。
玄関の木戸が空き、誰かがバイクを外に止めたまま庭に入り込んでいる。それは彼が期待した人物ーー城光ーーではなく、土気色の肌に蒼ざめた唇を宿す男だった。
襟元の赤いマフラーが、朝の風に揺れる。
「君は……?」
声をかけると、男がこちらを振り返る。
鋭い視線だけでも、男が戦いを望んでいることが見て取れた。その気配に一瞬たじろいだイブキに向かい、相手はゆっくりと指を挙げる。
「おまえのものか」
青年は振り返り、その指が彼のバイクを示していることを確認した。
896:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:22:56 W+G5osJjP
「そうですが、何か」
彼の言葉に相手はにやりと笑った。
「乗れ」
短く言い捨てて、外へと出てゆく。
イブキは狐につままれた様子で、それでもバイクに歩み寄った。外の道路では、男がひときわ高らかにアクセルを吹かして彼を誘う。
窓からおそるおそる顔をのぞかせた結花が、怯えた表情でこちらを見つめている。イブキは柔らかな笑顔でそれに答えると、竜巻のエンジンをかけた。
*
信号が赤く灯をともす交差点にバイクを止めた男が二人。それを見守るのは春の空に流れる雲と、天に祈るがごと大きく枝を広げたニレの樹のみ。
信号が青に変わった瞬間、二台のバイクが走り出す。
バダーは相手をあえて先行させると、一旦距離を置いた背後から一気に加速して迫った。ミラーに映る車影でそれと感づいたイブキが素早くコースを変え、高速のアタックをやり過ごす。
最初の一手を空ぶったバダーは、すぐにターンして竜巻へと突進して行った。が、攻撃態勢を整えるよりはやく、イブキは速度を上げてバダーとすれ違う。逆に背後を取られた格好のバダーは、ひとまず距離を広げて時間を稼いだ。
あらためて車首を巡らせ、相手を睨む。
今一度、交差点を挟んで二台のバイクが対峙した。
相手が自分の知るような存在ではないことを、イブキははっきりと理解した。
グロンギの中でも上位のゴ集団に位置するバダーは、魔化魍のように本能の赴くまま人を襲うわけではない。己と己が狩るバイクの性能を見定めた上で標的を狙う、計算高い狩人だ。
相手がただのリントではないことを、バダーもまた理解する。
おっとりとしたボンボンに見えるが、イブキはバイクに関してはかなりのマニアだった。弟子を取った都合で乗り換えたときですら古い愛車の面影を追って改造を施すほどのこだわりを持ち、ただの足としてのみならず戦いの道具としてバイクを乗りこなして来た。
バダーが脅威のライダーだとすれば、イブキは静かなるライダーと言えるだろうか。
数度の交錯を経て、バダーとイブキは互いの腕と意図とを理解した。相手を侮ることは敗北、即ち死を意味する。
バダーはゆっくりと腕を持ち上げた。
*
897:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:24:39 W+G5osJjP
ようやく追いついた結花が、目の前の光景に愕然とする。
赤いマフラーを靡かせた怪人に睨み据えられたイブキは、黒く汚れた口元を引きつらせている。その手には音撃管があるが、変身はできないのだ。
このままでは、イブキが殺される。
その確信に、彼女は身を振るわせた。
イブキが死ぬということ、次は自分が襲われるであろうということ、そして木場や海堂もいずれは狙われるであろうと言うこと。どこまでの予測が彼女を不安にさせたのかはわからない。それでも、このままでは最悪の未来が待っていると言う警告は明確に意識を揺さぶった。
ぐっと拳を握りしめ、唇を噛む。怒りと憎しみに身を任せようとしたとき、先刻イブキが口にした言葉が脳裏をよぎった。
ーーーー戦いたくなければ、戦わなくていいんだよ。
その優しさに甘えたい、という感情と同時に、自分が怪物であることを知られたくない、という気持ちが胸を支配する。
彼女は荷物からトランシーバーを取り出し、スイッチを入れた。誰に聞かれるかなど考えもせず、必死に叫ぶ。
「誰か、来てください。助けて……!」
* * *
危険こそ犯さないとはいえかなりのスピードでバイクを飛ばす五代に、光の顔が若干ひきつっている。サイドミラーに映る姿でそれと気づくと、五代は明るく言った。
「恐かったらもっとしっかり捕まっていいんですよ」
「……なんだと?」
光が低く呻く。五代は片手で、自分の腰の上に乗った光の腕を叩いた。
「ほら、ここんとこ。もっと、ぎゅっとね」
「ふ、ふざけるな……!」
馬鹿にされたと思ったのか、光はついと顔を背けた。その割に腕には力が入っている辺り、やはり恐いのか。
くすりとしつつ、もう少し速度を上げようとした五代の耳に、甲高い雑音が届く。
「おい、ちょっと停めろ」
光の低い求めに、五代が慌てて従う。
デイパックの口からこぼれ落ちたトランシーバーは、助けを求めるように赤いランプを明滅させていた。
「結花か。どうした、今どこにいる」
訊ねる光の脇で、五代も耳をそばだてる。GPSを使って現在位置を確認させる間も、結花は恐怖を紛らわせようとでもいうように、今の状況をしゃべり続ける。
898:リング・オブ・ローズ ◆CIPHER0/kY
08/07/07 00:25:33 W+G5osJjP
おおよその場所を把握して交信を切り上げると、五代は改めてハンドルを握る手に力を込めた。
「つかまってください!」
彼の言葉に光が頷き、荷物を背負って腰に手を回す。その感触を確かめると、五代は再び鉄の馬に拍車をくれた。
赤いマフラーを靡かせ、バイクを駆る土色の肌の男。それが『あのグロンギ』であろうことは想像がついた。むろんイブキがバイクに乗って脱出したことも記憶にある。だからこそ、今何が起こっているかもはっきりと理解できた。
イブキが奴の手にかかる前に止めなければ。
「変身、できますか」
前を向いたまま訊ねる五代に、光は片手で彼の服を握ったまま、もう片方の手でファムのデッキを取り出す。
もしもこれが使えなければ、こちらの打つ手はもはやないに等しい。なにより、あのグロンギが余計な標的に目を付けるのは避けなければ……。
黙ってバイクを走らせながらも、五代は必死に考えを巡らせた。
*
ショッカーがその技術の粋を駆使してカスタムアップしたハリケーンは、ただ走らせるだけでもずば抜けた走行性能を持つ。一方の竜巻は、イブキ自身の手で愛と情熱を込めて整備されているとはいえ、所詮はクルージング用に過ぎない。
ただ走らせるという意味での戦いならば、決着は始まる前についていた。
背後から車体をぶつけられ、バランスを崩しそうになりながらも、イブキが宙に印を描く。透き通る朝の陽から生まれ出でた燃ゆる翼がバダーの鼻先をかすめ、かろうじて追撃を妨げる。
だが体勢を立て直すや、前輪を高く掲げたバダーがサイクロンごと彼にぶつかって行った。
竜巻が横転し、空き地に投げ出されたイブキが肩を押さえて立ち上がる。